[1]サン☆
【ルーク少年の常々譚】
お久しぶりです。
以前ちまちまとこちらで書かせていただいていました、サンと申します。
事業の合間で少ーーしずつ書いていくつもりですので、宜しくお願いします。
2015/06/13 19:26
[2]t・o
はじめまして!t・oです!
よろしくお願いします!
2015/06/14 16:01
[3]清瀧
初めまして、サン☆さん。
以前の小説、少しだけ読ませていただきました。
とっても面白かったです!
今回の作品期待しております!
2015/06/14 20:58
[4]サン☆
t・o様
はじめまして。こちらこそ宜しくお願いします。
清瀧様
以前の物にまで目を通して下さるとは…
ありがとうございます。宜しくお願いします。
2015/06/24 20:22
[5]サン☆
『1』
以前アロマさんと暇潰しを議題に話し合ったことがある。
まあ実際は話し合いとは名ばかりのただの雑談だったのだが。
「ルーク君は、たとえばデートの待ち合わせのとき、相手よりちょっとだけ早く着いちゃって、暇を持て余しちゃったら何をする?」
これは僕の完全なる偏見であり特別誰かに同意を求めるようなことではないのだが、女性というのは何故こうも落ちの無い話をしたがるのだろうか。
僕自身としては起承転結がハッキリと成され落ちるべくして落ちる話題を好むのだが。
しかしそんなことをいちいち口に出すような僕でもなかったので、取り敢えずそれっぽい言葉を返してみる。
「デートですか?そうですねえ、僕なら本を読みますね。持ち合わせが無ければ、近場の本屋にでも足を運ぶと思いますけど」
「え、本を読むの?買ってまで?……へえ、そうかあ」
そちらから聞いておいて微妙に落胆された風を見せられるのは甚だ心外ではあったが、これは少し気取ってみたとか背伸びしてみたとかそういうことではなく事実である。
アロマさんはどうやら携帯電話を弄るらしいが、なるほど、そういう暇の潰し方もあるだろう。
「そういえば、ルーク君って私の知らない本をいっぱい持ってるよね。あれって全部自分で買ってるの?それとも、ご両親とか、レイトン先生とかだったりするのかな」
「いえ、基本的に本は自分で買っていますよ。お父さんが買ってきてくれる本は、伝記や図鑑ばかりですからね。特に伝記は苦手です。あれはノンフィクションを謳ってはいますが、実際にはやはり部分部分でフィクションが混ざっていますので、そんな雑多な読み物を眺めるくらいなら、もっと夢のあるファンタジーや、手に汗握るサスペンスの方が面白いじゃないですか」
「へえ、ルーク君お金持ってるんだね」
確かに僕は近所の子供の家庭教師や図書館の仕事の手伝いなどで小銭を稼いではいる。
しかしそこで稼いだ金銭の大半は本の購入費用で消えていた。
まあそれに関しては僕もとやかく言うまい。僕が額に汗して小銭を稼いでいるのは、蓄えるためなどでは断じてなく、あくまでも使うためであるのだから。
「……」
気が付くとロンドンの空は赤みがかっていた。
夕暮れに吹く風は心地いい。このまま外で、いつまでも談笑していたいと思わせるくらいには。
「ルーク君ってさ、ほら、好きな女の子?とか、気になってるなーって子、誰かいないの?」
「好きな人……ですか。いや、特にはいませんよ。周りに同年代の女の子が少ないというのもあるのでしょうが、それを差し置いても、僕はあまりそういうタイプの人間じゃありませんので」
「……別に、恋をするのにタイプとか、無いと思うけどね」
アロマさんは、少し悲しそうな笑顔で、そう言うのだった。僕はとりわけ含みを込めて言ったつもりはないのだが、少し怒らせてしまっただろうか。
「アロマさんはどうなんですか?誰か、特定の異性はいらっしゃらないんですか」
「ん?今目の前にいる人」
「え、えええ?」
唐突なカミングアウトに僕は動揺を隠せなかった。女性とはほぼ無縁の人生を歩んできただけあって尚更である。
「あまりいい冗談ではないですよ、アロマさん。そうやって直ぐに僕のことをからかうのは止めてくれませんか」
「あ、バレた?てへ」
あ、嘘だったんだ。
自分でもまったくちぐはぐなことを言っているなあなどと感じつつ、僕らは帰路を共にするのだった。
2015/06/24 21:05
[6]t.o
ルークとアロマの会話(笑)
ほのぼのとしていていいですね!
ルークの語りが凄くてなんかルークが頭良さそうに見えますね!
ルーク「どういう意味ですかそれ?」
更新頑張ってください!
2015/06/26 19:22
[7]サン☆
t.o様
毎度のレス、本当にありがとうございます。
気ままに眺めてやって下さると中の人も喜びます。
2015/07/04 12:17
[8]サン☆
『2』
嫌なことがあったときや物事に対し挫折してしまいそうになったとき、僕は決まって彼女のことを思い出すのだった。
彼女とは、まだ僕が7歳位のころに知り合った近所の絵描きである。
彼女は公園で年季の入ったディーゼルを広げ、そこを行き交う人や風景を楽しそうに描いていた。
当時の僕は、そんな彼女を物珍しそうに眺めたものだ。
ある日のことだった。僕は彼女に話しかけてみた。
「お姉さん、いつもここで絵を描いているね」
「……君も、いつもここで私の絵を見てくれているね。きっと探せば、君のことを描いた絵がいっぱい出てくると思うよ」
彼女は微笑みながらそう言った。
本当に楽しそうだったのだ。絵を描いている時の彼女は、とにかく活気に溢れていて……僕とはまるで逆だった。
その頃の僕は、どちらかといえば暗く後ろ向きな性格で、誰かに心を開いてみるといったことが無かった。
だから、そんな風に趣味に打ち込み笑顔を浮かべる彼女に、僕は心から魅せられたのだ。
「……え」
不意に僕は声を漏らす。
「ん、どうしたの?」
彼女の問いかけに、僕はしばらく黙ったまま答えることができなかった。
それは彼女が着ている服の隙間から、実に生々しい単語が見えてしまったからなのだった。
彼女の胸元には、『性奴隷』と極太のマジックで描き殴られていたのだ。
幼いながらそれなりに語彙に富んでいた僕は、その意味を理解するのにあまり時間は要さなかった。
端的に言ってしまえば、彼女はどこかで男たちにいいように弄ばれているということなのか。
「……君、大丈夫?黙っちゃって、具合でも悪い?」
彼女は僕にそう問い掛けた。
「いえ、大丈夫、です」
胸のモヤモヤを拭い去れないまま、僕はそのまま彼女と別れた。
なあに、まだ彼女が乱暴、いわゆる強姦の対象になっていると決まったわけではない。遊びで、出来心で書いてしまった可能性も十分にある。
出来心でそんなことを書く奴がまともな神経の持ち主のワケはないが。
幼い僕はただ語彙に富んでいただけで、物事を客観的に捕らえる能力があまりにも欠如していた。
だから気づくことができなかった。
自分の胸元に字を書き殴るなど、誰かの手によってでなければ絶対に不可能だということを___
翌日、僕は彼女の顔を見て絶句した。
誰かに殴られたのか、彼女の顔は恐ろしいほどに腫れ上がっていた。
「あ、君かあ、こんにちは」
彼女は腫れた顔で、無理に笑顔をつくって会釈する。
「お姉さん……その顔は、一体」
「ああ、ちょっとそこで転んじゃって」
「やめてください、やめてくださいよ、そういう嘘をつくのは。そんな傷、誰かの手によってでなければできるわけないじゃないですか」
「……」
彼女は俯いてしまった。そして少しの間を置いたあと、彼女は語る。
「私の家がね、その、悪いところからすごい借金をしていて、毎日、取立ての人が私やお母さんに乱暴をするの。こうした暴力だったり……レイプだったり……」
「っ………」
彼女はそんな状態で、そんな精神で、そんな状況で、毎日、絵を描き続けてきたのだ。
「……なんで、なんでお姉さんは、そんなに強いんですか」
「別に、今を頑張って生きているだけだよ」
「それは、例えば僕に友達がいなくても、根が暗くても、いいことが無くても、寂しくても、死にたくなっても、それでもなんとか生きていこうとか、明日があるとか、次はきっといいことがあるとか、そういうことなんですか?」
「違うよ、そんなんじゃない。そんな、取り敢えず今日を凌いでいこうみたいな、そんな考えじゃない」
「……だったら」
「夢があるからだよ」
そう、彼女は僕に告げるのだった。
その時、僕はこんなときに何を場違いなセリフをと思ったものだ。
それくらい、それは僕にとって無縁で、滑稽で、そして新鮮な言葉でもあった。
「私には、これしかないから。小さい頃から持ち続けている画家の夢を捨てきれないだけ」
僕は、そんな彼女を見て感じた。
幸せの形はひとつじゃないし、在り方もひとつじゃあない。
幸せを自分の目方と価値観で測り、それを他人に押し付けてしまうのは、きっと愚かなのだろう。
例えば金銭を得ることで幸福を感じる者がいるだろう。
例えば人を殺すことで幸福を感じる者もいるだろう。
例えば、どれほど追い詰められても、悲しくとも、夢を追うことができれば、きっとそれも幸せなのだろう。
彼女は幸せになるのを拒み、ただ夢を追いかけただけなのだろう。
彼女はきっと満たされているのだ。
身体が汚れてしまおうとも、目を背けたくなるような傷を負ってでも。
彼女は僕よりも遥かに満たされ、そして汚され、それでも今を生きている。
生きることで、夢を持つことで、心を活かしているのだ。
「僕も、お姉さんみたいに夢を持つことができるかな」
彼女はそんな僕の問いに対し優しく微笑み、
「できるよ」
ただ一言、そう告げるのだった。
それは今まで聞いたどんな哲学じみた言葉よりも、含蓄のある言葉だなあと思った。
その日を境に、僕が彼女に会うことはなかった。
今もどこかで生きているのかも知れないし、割と次の日くらいには殺されているのかも知れない。
それでも、僕は彼女を尊敬する。
誰かの為に何かをしてみたくなった。
彼女が、僕にそうしてくれたように。
彼女の存在は、今でもこうして、こんなにも僕の心をあたたかくしてくれる。
2015/07/04 13:35
[9]サン☆
『3』
「暑い……」
グレッセンヘラーカレッジ内部に存在するレイトン先生の研究室。
この研究室は風通しが悪いことに加え直射日光をももろに浴びる為に夏場は地獄と化すのである。
既に中はサウナ状態であり、隅に申し訳程度に置かれている扇風機に至ってはただ室内の熱気を甲斐無く掻き回すだけのオブジェとなっていた。
この際に何か一言付け加えさせていただくとするならば、積みに積まれた書物や印刷物のせいで室内の衛生状態はおよそ最悪と呼ぶにふさわしいものとなっている。
こうも物を雑多に放置しておくことが並みの人間にできるものなのか。
こんな亜空間に万が一女子生徒でも迷い込んでみよう。
例えどんな家庭環境で育った女子生徒でも、立ち入った瞬間に血相を変え裸足で逃げ出すこと請け合いである。
「ルーク、君、何か失礼なことを考えているだろう」
「いえ別に。っていうか先生、そのコート脱いだらどうですか。暑いでしょう」
「大丈夫、私はこれでも驚く程に代謝が悪い。よって発汗量が著しく少乏しいんだよ」
急遽微妙なカミングアウトをされ何て反応すればいいか分からないし発汗量が乏しいからコートを脱がないの意味がそもそも分からないし発汗量が乏しいという表現は些かおかしいような気もしたけれどそれらに関しては敢えて触れない大人びた僕でもあるのだった。
しかしそんなコートを羽織られては見ているこちらとしても見苦しいし何より不潔極まりない。
不潔の極致である。
「ルーク、私はこれでも一応は紳士もとい英国紳士を謳っている人間、謳わせていただいてる人間ではあるのだから別に月並な罵倒や暴言で傷ついたりするほどのヤワなメンタルは持ち合わせていないと自負しているけれどルーク、されどルーク。君が心の中で思っていると思い込んでいる言葉の数々は実際に君の口から無意識に発せられ図らずも私を傷つけるとまではいかなくてもチクチクと私の心を蝕んでいるということに気がついているのかな」
「あ……声に出してました?」
「ああ、ハッキリと」
この蒸し暑い中、饒舌な先生だなあと僕はそんなことを思うのだった。
2015/07/21 15:36