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【レイトン教授と創造の杖】
初めましてUと申します。
レイトン教授で初めて小説を書きます。
超低速更新なので、気長にお読み下さいまし
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〜序章 創造の杖〜
『創造の杖は全てを生み出す
大地も海も、そして生ける物をも
創造の杖は持ち主を選ぶ
運命に従い、逆らわざる者を
創造の杖は侵されてはならない
杖侵されしとき、生み出されし全ては消えゆくだろう』
2011/02/27 09:40
[33]U
島が狭いので、どこへ行くのも徒歩だ。飛び回る蚊が気になるが、健康的な移
動が僕は気に入っていた。デヴィッドさんは昨日のように僕の後ろをついてく
る。レイトン先生が言うには、デヴィッドさんは滅多に外に出ることがないの
だという。
役所は港から見えた高い塔の隣にあった。島の雰囲気に溶け込む、落ち着いた
薄茶色の壁を白い柱が支えていて、まるで要塞のような逞しい印象を生み出し
ている。中に入ると、島の建物を再現したミニチュアが飾られている。受付に
は人がおらず、『オルセイン氏は外出中です』と書かれた立て札が置いてある
だけだった。
「やっと着いたか・・・」
「先生、受付の人はどこへ行ってしまったんでしょうか?」
「ふむ・・・どうやらオルセイン氏を捜す手立てはここにはないようだ」
流石のレイトン先生も黙って考え込んでしまった。どこにいるかも分からない
、手がかりさえ手に入れられない。完全に行き詰まってしまった。ここまで僕
たちを困らせるなんて、オルセインとはどんな人物なのだろう?
「レイトン、僕が思うに、ここにいてもしょうがない」
「そうですね、でも・・・どうしましょう?」
「そうだな。オルセイン氏の情報を集める事から始めよう」
2011/04/14 16:50
[34]U
僕たちは一旦ホテルに戻って、ロビーでオルセイン氏の情報を集める事にした
。どうやらこの島で最も人が集まるのは、ホテルと遺跡公園らしい。ホテルの
中は、まだお昼前だというのに人で溢れていた。
「先生、すごい人ですね」
「これはただ聞くだけでも一苦労だな、レイトン」
「とにかく、まずはフロントに行ってみよう」
フロントでは、沢山の旅行客を相手にたった一人の女の人が働いていた。様子
を見ている限りでは、全く忙しそうには見えず、てきぱきと仕事をこなしてい
るようだ。最初は入り口近くまで延びていた列も、ものの数分で消えてしまっ
た。
「いらっしゃいませ、ご用を承ります」
「すいません、私達はゴードン=オルセイン氏を捜しているのですが、彼につ
いて何かご存じですか?」
「オルセインさん?失礼ですが、お客様方は旅行者ですよね?なぜオルセイン
さんにお会いする必要があるのですか?」
「ん・・・それは・・・」
レイトン先生は言葉に詰まってしまった。確かに、ただの旅行者が島の責任者
に会いたがるなんて明らかに不自然だ。英国紳士として嘘をつくわけにもいか
ず、レイトン先生は困ってしまったのだ。すると、デヴィッドさんが急に前に
出て喋り始めた。
2011/04/15 17:56
[35]U
「実は財布を盗まれてしまったんですが、警官さんは忙しくて取り合ってくれ
ないんですよ。仕方がないから責任者だというオルセイン氏に会いたいのです
。ご協力下さい」
そんな馬鹿な、僕はデヴィッドさんをにらみつけた。財布を盗まれて警察の責
任者に会うなんて、嘘にしたって出来が悪い。しかし女の人は得心したように
情報を提供してくれた。
「分かりました。私の知っていることがお役に立てるかどうか分かりませんが
・・・」
「いえ、どんな事でも構いませんよ」
「オルセイン氏はいつも役所の外に出かけていて、夕方頃に書類整理をしに役
所へ戻られます。その時からは帰るまで一切誰とも会おうとはせず、帰るとき
には車で島の一番奥のご自宅へ帰られます。会えるとすれば、出勤と帰宅の時
だけですね」
「なるほど、ありがとうございました」
僕は唖然とした。デヴィッドさんがこんな所で役に立つとは思わなかった。い
かにも口下手そうなのに、見事に情報を聞き出した。これでオルセイン氏に会
う手立てが得られた。
2011/04/18 15:59
[36]U
「夕方まではまだ時間があるな。それまでどうしようか」
「では、ルークの言っていたゾンビの事を調べてみようか」
「えぇ!?本気ですか!?」
「何だルーク、怖いのかい?」
「こ、怖くなんかありません!調査しましょう!」
正直に言うと昼間とは言え、ゾンビが現れた墓場に行くのは気が引ける。でも
レイトン先生ならゾンビのナゾが解けるかも知れない。そうすれば、この恐怖
心も少しは紛れるかもと、僕は淡い期待をしていた。
遺跡公園は昨日と同じように人がたくさんいて、島のメインストリートよりも
賑わっていた。普通の観光客なら遺跡を見に行くだろうが、僕たちは遺跡を素
通りして共同墓地に向かった。まだ2人の警官が鉄の門の前で警備をしている
のが見える。
「ここだ。やはり何もおかしいところは見当たらないね」
「確かにゾンビが現れたんですけど・・・やっぱり僕たちの見間違いなんでし
ょうか?」
「そんなはずはない、ルーク君はともかく、僕は冷静だった。あんな見間違い
をするワケがない」
デヴィッドさんは一言多い。僕は今だって怖いけど、あの時デヴィッドさんは
全く平常心だった。確かに昨日の夜、ここでは何かが起こった。レイトン先生
は墓場を歩きながら考えていた。しかしそこにあるのは普通の共同墓地だ。
2011/04/19 16:21
[37]U
「おや?これは・・・」
「どうしたんですか先生?」
「何か見つけたのか?」
レイトン先生は足下の、何の変哲もない土を見つめている。僕とデヴィッドさ
んも同じ場所をよく見たが、特におかしな物は見当たらない。
「何があったんだレイトン?」
「ふむ・・・もしかしたら、これがゾンビの秘密かもね」
「えぇ!!?分かったんですか!?」
「まだ可能性の段階だよ。一度実物を見てみないと、確信は持てないね」
つまりレイトン先生は、夜中にもう一度ここへ来ると言うのか。あの状況にい
なかったからそんなことが言えるんだ。でも、それでゾンビのナゾが解けるの
なら仕方ないとも思う。
「どんな可能性なんだよレイトン、教えてくれ」
「いや、確信を持ってから話すよ」
まただ。ナゾが解けても、最後までもったいぶるのがレイトン先生の常套手段
だ。レイトン先生は、僕とデヴィッドさんにはナゾの種を明かさないまま、昼
食を食べに島の繁華街に向かった。
名前は繁華街だが、客のほとんどは遺跡公園に持って行かれているため、ロン
ドンほど賑わってはいない。建物のほとんどがコンクリートでできていて、鉄
製の街灯が一直線に並んでいる。なんとなく暗く重苦しい雰囲気だ。
2011/04/21 16:56
[38]U
「先生、この繁華街、あんまり賑わってませんね」
「もともとポワール島は、貴重な鉱山資源が豊富な事で有名だったんだ。だか
らその鉱物を売って多くの資産家が儲けていたんだが、あるときこの島の西部
で遺跡が発見されたんだ。それらは今までイングランドで見つかった遺跡のど
れとも共通点を持たない、全く新しい遺跡だったんだ。イングランド政府は、
この遺跡の調査をするために鉱山の開発を全面的に禁止し、それまで賑わって
いた街もかつての華やかさを失ってしまったんだ」
確かに街の至る所に、以前の栄華を象徴するようなオブジェや記念碑がある。
遺跡が見つかった事が、この島には良い影響と悪い影響を同時にもたらしたよ
うだ。
「レイトン、そこのレストランに入らないかい?」
「ほぅ、中華料理店か。いい匂いがしてくるね」
「先生、ここにしましょう!」
僕はお腹が減っていた。店の中から漂ってくる料理の匂いが、僕の食欲をより
かき立てる。中には4つの回転テーブルが並べられていて、お客さんはそれほ
ど多くない。
中華料理は嫌いではないが、味付けがやたら濃いのが気になる。デヴィッドさ
んは、辛い麺を音を立てて食べていて、周りの人から変な目で見られている。
一緒に食べているこっちまで恥ずかしい。僕はそれを紛らわせるためにも、レ
イトン先生に創造の杖について聞いてみた。
2011/04/22 15:25
[39]U
「先生、以前デヴィッドさんと話したんですけど、創造の杖なんて物あり得る
んでしょうか?」
「創造の杖か。私もあの本で読んだことがあるが、確かに一際興味深い内容だ
ね。この島はあの伝説の発祥地らしい」
僕たちが話していると、昼日中だと言うのに酔っ払ったおじいさんが近付いて
来た。どうやらこの島の人のようだ。
「おぅい、あんた達ぃ。今創造の杖がどうのって喋ってなかったか?」
「え?あ・・・はい」
「創造の杖はなぁ、架空の物じゃないんだぁ」
「と言いますと?」
「大昔からこの島に住んでたわしの一族はなぁ、創造の杖の在処を知ってるん
だぁ」
「なるほど。その在処とは?」
「この島の西の森の中だぁ。地図があればわかりやすいんだがぁ」
すると、食べ終わって口の周りが辛口ソースまみれになったデヴィッドさんが
、バッグから木の板の地図を取り出してきた。
「これですか?」
「おぉ!おぉ!これだぁ!この丸で記してある場所だぁ」
「えぇ!?これって創造の杖の地図なんですか?」
「間違いない!」
2011/04/25 16:31
[40]U
酔っ払ったおじいさんは、そのまま店の主人になだめられて店を出た。僕は唖
然としていた。デヴィッドさんの持っていたいかがわしい地図が、創造の杖の
在処を示す地図だったのか。酔っ払いからの情報とはいえ、僕は心が弾んだ。
昼食を済ませても、オルセイン氏が役所に帰ってくるという夕方にはまだ時間
がある。それまで僕たちは、街の中を観光した。そして日が陰ってきて、僕た
ちは役所の前でオルセイン氏を待ち伏せすることにした。
「先生、オルセイン氏ってどんな人なんでしょうね?」
「この島の行政を任せられる事を考えると、政府内では大きな影響力を持って
いるようだ。おそらく、とても有能なのだろうね」
「おい、誰か来たぞ」
デヴィッドさんが指さした先には、青がかった灰色のスーツに、似た色のネク
タイを締めた背の高い男の人がいた。軽くパーマのかかった金髪とエメラルド
色の瞳が、いかにも仕事ができそうな印象を与えている。その人は僕たちを見
ると、少し立ち止まってから僕たちに近付いてきた。
2011/04/26 16:46
[41]U
「君達、こんな時間に子供を連れて役所の前にいるなんて、一体何の用だ?そ
っちの男は見るからに怪しいが・・・」
「な、何!?」
「先生、何だかこの人、偉そうですね」
「しっ、ルーク、陰口はよくないよ」
「う・・・すみません先生」
レイトン先生に注意されて、僕は口を閉じた。それにしても、この人の偉そう
な態度には思わず嫌な気分になる。しかも背が高いだけに、人を見下している
ようにも見える。
「失礼します、私達はこの役所に勤めておられる、オルセイン氏に会いたいの
ですが、あなたは?」
「何・・・?オルセインというのは私だが?」
「この人がか・・・何だかイメージと違うなぁ」
デヴィッドさんは小さく、僕に囁いた。確かに、島一つの行政を任されるにし
ては若すぎるように見える。おそらく、まだ二十代後半ぐらいだろう。
「君達、見たところこの島の人間ではないが、旅行客が私に何用だ?」
「遺跡公園の先にある共同墓地に、古い鉄門がありますね。私達はあの先へ行
きたいのですが、あなたの指示で警官が通してくれないのです。通るにはあな
たの許可が必要と聞いたので、通行許可を頂きたいのです」
2011/04/28 16:27
[42]U
オルセイン氏はつまらなそうな顔をしながらレイトン先生の話を聞いていた。
今まで同じような事を何度も聞いて、飽き飽きしているようだ。だとしても、
人の話をそんな風に聞くなんて、紳士的じゃない。
「なぜ私が見知らぬ旅行客に、通行許可状を発行しなければならないのだ。そ
もそもあの鉄門の先には汚い森しかない。行く価値はないと思うが?」
「それでも構いません」
「私は君達のように暇ではないのだ。どきたまえ」
「あっ!」
オルセイン氏は、僕を無理矢理どかして役所の中に入っていった。僕はよろけ
てその場に倒れてしまった。
「大丈夫かいルーク君?まったくいけ好かない奴だな」
「ふむ、オルセイン氏は私達が島を詮索するのが気に入らないようだね」
「どうするんですか先生?これじゃあの門の先に行けません」
「う〜ん・・・」
すると、デヴィッドさんが急にはきはきと僕たちに言った。
「レイトン、あいつの許可が無くてもあの門の先に行けるぞ」
「本当かいデヴィッド?どうするんだ?」
「昨日の夜には警官がいなかったんだ。おそらく夜には見張りをしていないん
だ。行くなら今日の夜だ」
「よ、夜ですか!?僕は反対です!」
2011/04/29 15:29