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【レイトン教授と創造の杖】
初めましてUと申します。
レイトン教授で初めて小説を書きます。
超低速更新なので、気長にお読み下さいまし
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〜序章 創造の杖〜
『創造の杖は全てを生み出す
大地も海も、そして生ける物をも
創造の杖は持ち主を選ぶ
運命に従い、逆らわざる者を
創造の杖は侵されてはならない
杖侵されしとき、生み出されし全ては消えゆくだろう』
2011/02/27 09:40
[53]U
デヴィッドさんは困ってしまい、オルセインを睨んでから、仕方ないとばかり
に、無理矢理手を掴んで乱暴に握手した。どっちが嫌われ者か分からない。し
かしオルセインの方も、握られた手をハンカチで丁寧に拭いて、さっさと窪地
の穴まで歩いて行ってしまった。
「先生、この2人と一緒で大丈夫なんでしょうか?」
「どうも彼らは水と油のようだね」
レイトン先生は笑いながら、デヴィッドさんを連れて穴に入っていった。僕も
遅れないように、続けて穴に入り、最後にオルセインが続いた。
中はとても広く、明るくするための豆電球と、土を運び出すトロッコの線路が
奥まで続いている。穴というよりは洞窟だ。中に入ると、突然不思議な感覚に
襲われた。しかしこの感覚には覚えがある。
「レイトン・・・どうも僕はこの場所に合わないようだ。入った途端に頭が痛
くなってきた。君は何ともないかい?」
「デヴィッドさんもですか?実は僕も急に・・・どうなっているんでしょう」
「大丈夫、すぐに慣れる。この穴は島の地下にあり、周囲の土は磁気を帯びた
金属を多く含んでいる。ここで小さな磁気嵐のような現象が起こっているのだ
ろう」
「なるほど、初めてこの島に来た時に感じた物と同じようですね」
そうだ、フェリーに乗っていた時に感じた頭痛だ。どうやらこの島の周りには
大きくて弱い磁気嵐が起こっていて、奥に行くほど強くなっていくらしい。僕
は我慢できずに腰を抜かしてしまったが、オルセインが後ろから優しく支えて
くれた。
2011/05/23 16:54
[54]U
「大丈夫か。君にはちょっとキツ過ぎるんじゃないか?」
「すみません、もう大丈夫です。先に進みましょう」
「ルーク君、気を遣うことはない。僕だってまだ痛いのだから、もう少し慣れ
てから行こうじゃないか」
フラフラしながら、デヴィッドさんは僕の隣に座った。正直に言うともうほと
んど慣れているのだが、僕は気を遣って頭が痛いフリをした。それを見てオル
セインは、僕とデヴィッドさんに飴をくれた。
「食べなさい、これで少しは気分が良くなるだろう」
「おや、よかったねルーク」
「ありがとうございます・・・うん!美味しいです!」
赤い包みに入っていたのは、ストロベリー味の飴だ。どうやらまだポケットに
いくつかあるようだが、それよりもこの人が飴を持ち歩いていることの方が驚
きだ。デヴィッドさんは緑色の包みの飴を口に放り込むと、よく味わいもせず
に吐き出してしまった。
「うえぇ!マスカット味じゃないか!」
「デヴィッドさん!何をしてるんですか!せっかくの飴なのに・・・」
「確かデヴィッドはマスカットやブルーベリーが苦手だったね。もったいない
が、これはもう食べられないね」
せっかくオルセインとデヴィッドさんが仲良くなるチャンスだったのに、自ら
台無しにしてしまうなんて。好き嫌いぐらい我慢すればいいのに。しかし、お
陰で頭痛が消えたらしく、すっかり元気になったみたいだ。
2011/05/24 16:39
[55]U
〜四章 ポワール島の地下遺跡〜
懐中電灯で足下を照らし、線路に躓かないように気を付けながらゆっくり洞窟
を進んでいく。3年かけて掘り進んでいるため、かなり奥まで整備が行き届い
ている。しかし、歩いて30分程度の所で、急に大きな岩の壁が僕たちの道を
ふさいだ。
「これは・・・!?」
「どうやら行き止まりのようだね。どうにかして先へ進めないだろうか?」
「3ヶ月ほど前からこの岩の先に進めないんだ。爆薬ならいくつかそこの箱に
保管してある。君ならこの壁を壊せるんじゃないか、レイトン君?」
「ふむ・・・」
レイトン先生は壁を叩いたり、近くに散らばった爆薬の破片を調べたりしなが
らしばらく考えてから、何かを察したように爆薬を取り出し、薄くしてから壁
にいくつか貼り付けた。
「先生、何をしているんですか?」
「この壁を爆破するのさ。これだけ爆薬があれば十分だ」
「でも先生、既に爆破の後があるのに岩があるって事は、今まで壊せなかった
ってことじゃないでしょうか?」
「そうだね、このやり方を試した事がないことを祈ろうか」
2011/05/26 17:21
[56]U
爆薬のセットが終わると、僕らは離れた岩陰に隠れて、レイトン先生が点火し
た。小さな爆薬とは言え沢山セットしているせいで衝撃は凄まじい。狭い洞窟
に大きな爆発音と衝撃波が響き渡り、洞窟が丸ごと震えた。天井から細かい石
が降ってきて、デヴィッドさんの頭に当たった。
舞い上がった土煙がおさまって、おそるおそる岩陰から出てみると、サッキま
で丈夫そうな顔を見せていた岩の壁は跡形も無く崩れ去っていて、奥に暗い通
路のような物がうっすらと見えていた。
「これは・・・どういうことだ?」
「すごいです先生!あの固そうな壁がなくなりました!」
「どうやら上手くいったようだね。それにしても凄まじい爆発音だったが、大
丈夫かいルーク?」
「・・・少し耳が痛いです」
僕が耳を押さえて言うと、レイトン先生は帽子の位置を直して軽く笑った。オ
ルセインが不思議そうに崩れた壁を眺めていると、デヴィッドさんが洞窟内に
響き渡る声で説明し始めた。
「なるほど!爆弾のプレート効果を利用したわけだな!」
「プレート効果・・・って何ですか?デヴィッドさん」
「普通爆弾は、爆発すると全方向に均等に力を発するが、ある程度薄いプレー
ト状の爆弾は、力を面に垂直に伝える。だから、ある方向へ普通の爆弾よりも
強い力を与えることができるのさ。これを沢山つければ、あんな壁など簡単に
破壊できるさ」
2011/05/27 16:56
[57]U
「流石はレイトン君・・・というところか」
どうにもこの2人は仲が悪い。自慢げに喋るデヴィッドさんもだが、オルセイ
ンもわざわざ棘のある言い方をしなくて良いのに。新しく見えた道を前に、僕
とレイトン先生はやれやれと肩をすくめた。
新しい道は、今までのような洞窟とは違い、明らかに人の手が加えられた通路
・・・遺跡の様な雰囲気を漂わせていた。洞窟よりは狭いが、レイトン先生の
帽子が十分に収まるほど高い天井と、キレイに敷き詰められた石に凹凸や段差
は全く無い。
「これは・・・一体何の遺跡なんだ?」
「この壁に書かれた象形文字は、昔この島で暮らしていたポワール族の使って
いた物に似ているな・・・。もしかしたら彼らの遺跡かもな」
「ポワール族の遺跡なら、『創造の杖』の可能性もぐんと上がりますね!」
オルセインは、そう言った僕の顔を見てはにかんだ。今やすっかり、デヴィッ
ドさんよりオルセインの方がいい人に見える。嫌みな口調は相変わらずだが、
利用しているとはいえ僕らを気遣い、子供の様に好奇心の赴くまま進んでいる
姿は、嫌いになれるものじゃない。
この遺跡の中は、先ほどの洞窟とは違いおかしな磁気嵐は起こってないようで
、頭痛も目まいもすっかり消え去った。しかし人の気配がなく、何が待ってい
るか分からない不安は奥に進むに連れてますます増えていく。僕以外の3人は
やはり、好奇心と探求心で息が荒くなり、無意識のうちに歩みを速めている。
2011/05/30 14:33
[58]U
「先生、もう少しゆっくり歩いて下さい。ついて行けません」
「おっと気が付かなかった。こういう所に来るとつい心が沸き立ってしまうね
。おや、何か見えてきたよ、ルーク」
先生の指さす先には、弱々しい懐中電灯の明かりに照らされてうっすらと暗闇
に浮かび上がる扉があった。その手前には、レイトン先生の研究室より少しだ
け広い小部屋があり、床には小さな穴が無数に開いている。部屋に入ったとき
、カチッという音が聞こえた気がした。
「なんだこの部屋は?何か意味があるようだが」
「見たところ部屋のようだな。扉は・・・開かないようだ」
「行き止まりでしょうか?」
「そんなことはないさ。扉があるならその先には必ず空間がある。しかしどう
やって開ければ良いんだろうね?」
デヴィッドさんは壁により掛かって一休みしている。僕も休もうと思ったが、
英国少年としては地面に座ってお気に入りのズボンを汚すなんて事はしない。
「先生、どうですか?」
「どうやら何か仕掛けがしてあるようだ。この遺跡はおそらく『創造の杖』に
続いているだろうから、こういう障害や罠はあって当然だね」
「じゃあやっぱり、この奥に『創造の杖』が・・・」
「うわあああぁぁぁぁぁ!!」
2011/05/31 16:23
[59]U
急に座り込んでいたデヴィッドさんが奇っ怪な悲鳴をあげて飛び上がった。見
ると、座っていた場所に小さな黒いうごめくものが密集していた。ロンドンじ
ゃあまり見られないけれど、それが何なのかはすぐにわかる。
「どうしたんですかデヴィッドさん?あ、アリですね!」
「こんな所に巣を作るなんて・・・意外とたくましい生き物だな」
オルセインは感心しているが、その様子を見たレイトン先生の表情は難しくな
り、急に僕を肩車して叫んだ。
「うわぁ!どうしたんですか先生!?」
「まずい!これは猛毒を持つアリだ!2人共なるべく刺激しないように静かに
したほうがいい!」
デヴィッドさんとオルセインの動きがピタッと止まった。デヴィッドさんはゆ
っくりと壁により掛かり、オルセインは部屋の端で直立不動だ。僕はレイトン
先生に肩車されて開かないドアの前にいる。
「レ、レ、レイトン・・・どうにかならないのか・・・?」
「2人共できるだけ刺激しないように、持っている物を見せてくれ」
「え、え〜と・・・」
デヴィッドさんのポケットには、さっきの爆発で降ってきた小石しか入ってな
かった。しかしオルセインは、コンパスやミニナイフやルーペなど、様々な道
具が入っていたが、特にアリを追い払えるような物は無かった。レイトン先生
も色々な小道具は持っていたが、やはり今は役に立たない。
2011/06/02 15:13
[60]U
「どうしたものか・・・このままではいずれアリに襲われてしまうぞ」
「先生、大丈夫ですか?」
「ふむ・・・」
その時、デヴィッドさんが胸のポケットを探って何かひらめいたようにそっと
手を叩いた。デヴィッドさんの手には、さっき吐き出したマスカット味のアメ
の包み紙が握られていた。
「オルセイン!まだアメがあるだろう!出してくれ!」
「なるほど、それでアリを誘導できそうだ。オルセインさん、こっちへ渡して
下さい」
「わかった。君達に任せよう」
オルセインはレイトン先生にアメを3,4粒投げ渡して、レイトン先生はその
包みを剥がして僕に渡した。
「それを向こうの通路まで投げてアリを誘導してくれ。落ちないように気を付
けてね」
「は、はい!」
僕は通路の奥めがけてアメを投げた。すると、足下で動き回っていたアリが通
路に向かって行進し始め、全てのアリが部屋を出て行った。緊張が解けたデヴ
ィッドさんはその場で腰が抜けたように尻餅をついた。
「た、助かったなぁ・・・」
「生きていて初めてアメに感謝したよ」
「よくやったねルーク。おや、扉が開いているようだ」
「先生、もう下ろして欲しいんですが・・・」
2011/06/06 16:39
[61]U
〜五章 創造の杖の真実〜
無事ピンチを切り抜けた僕たちは、狭い遺跡の通路を一列に進んだ。そこから
しばらくは、デヴィッドさんが躓いて危うく眼鏡を割りかけるくらいの事しか
起こらず、何だか拍子抜けだった。もっと沢山、もっと危険な罠が待ち受けて
いるかと思ったら、どうもあれでおしまいらしい。
「先生、なんだかあっけないですね。罠はあれだけなんでしょうか?」
「油断はしないほうがいいが、確かに思ったよりも警戒心が薄いようだ」
「昔、ポワール人達がこの島で独自の文化を発展させていた時代、ポワール人
達にはある首長がいたらしい」
急にオルセインが話し出した。
「首長は、ポワール人達に対して絶対的な権限を持っていて、広く崇拝されて
いたようだ。おそらく、首長としての証が『創造の杖』。それを盗もうとする
者も当然現れるはずだ」
「ならもっと厳重な罠を張り巡らすんじゃないのか?」
デヴィッドさんがすかさず口を挟む。
「今でなら特定の人物のみを罠にかけることができるが、この先に『創造の杖
』があるとすれば、首長は必要に応じてそれを取りに来る。その時に、さっき
のように相手を選ばない罠をいくつも仕掛けては、自分が罠で死んでしまうこ
ともあるかもしれない。だから、あれだけしかなかったんだろう」
2011/06/09 18:01
[62]U
なるほど、確かに自分の仕掛けた罠に引っ掛かるなんてマヌケな事は無い。で
もこれでは、盗人にとっても同じではないか。罠を知っているとはいえ、首長
がここに入りやすいように盗人もここに入るのはそう難しくはない。
「じゃあもしかしたら、ここが本当に『創造の杖』の遺跡だったとしても、既
に盗み出されてるかも知れないんじゃないですか、先生?」
「そうかもしれない。だが伝説には、『創造の杖は持ち主を選ぶ 運命に従い
逆らわざる者を』とあったはずだ。簡単には持ち出せない仕掛けがあるに違い
ない」
「その通りだ。そもそも、運命に従う人間は盗みなどしないだろう」
デヴィッドさんが無理矢理話に入ってきた。運命に従うという事がどういうこ
となのかはよくわからないが、もし『創造の杖』が本物なら、誰だって盗もう
と魔が差すことぐらいあると思う。その時、僕らの目の前に大きな扉が現れた
。いかにも、この先に重要な物を隠しているような怪しげな雰囲気を漂わせて
いる。
「これは・・・なるほど、ここが『創造の杖』の部屋というわけだな」
「鍵が掛かっていないな・・・いや、風化して意味が無くなっただけか」
オルセインとデヴィッドさんは扉を調べて、片方ずつを押して扉を開けた。金
属が地面を引っ掻く嫌な音と、崩れてくる周りの岩の鈍い音が響き渡る。小さ
な懐中電灯の明かりに照らされた洞窟内が、扉の向こうから漏れてくる光で溢
れた。時刻はまだ真夜中だというのに、部屋の中は青白い光で一杯だった。
2011/06/10 17:11