[1]バートン
【レイトン教授と悪辣な島】
「痛…っ」
座礁した小舟には穴が空き、これで島を出ることは不可能なようだ。
「大丈夫かい、ルーク?」
「はい…なんとか…」
投げ出された場所が、砂浜で良かった。
多少のかすり傷はあるが、僕も先生も大怪我はしていない。
帽子を深くかぶり直し顔を上げると、ロンドンでは決して見ることのない木々が…ジャングルがそこにはあった。
(タイトルのとおり、リレー小説を書いていって下さい。続きお願いします。決まりは特にありません。)
2009/02/04 21:02
[129]バートン
我に返ったルークは、あることに気づく。
先程目にした、彼女の痛々しい姿。
背に刺さった矢。
溢れだす鮮血。
意識も朦朧としていた彼女は、何故ここに立っているのか。
それを問うと、彼女は言う。
「あんたの気にするところじゃない。それよりも…」
そう言いながら、彼女は自らの服で僕の身体を濡らしている血を拭き取る。
実際には、伸びて終わったのだが。
彼女に悟られぬように背中を覗こうとした、その時。
不意に彼女が口に手を当て、咳き込み始めた。
指と指の間から、赤黒い液が流れている。
何もできず呆然と立ち尽くす僕の横から先生の手が伸びる。
咳は激しくなる一方で、ついに立てなくなった彼女はその身を先生に預ける。
「ルーク!!私の鞄からハンカチを!!」
「はっ…はいっ!!」
背の傷を片手で押さえ、必死に血を止めようとする先生。
やはり、傷が塞がったなんてわけでなかったか。
では何故彼女はここまでこれたんだ?
しかもあの勢いで。
僕を押さえるのにも相当な力も要しただろう。
ねぇ、何故?
問いたくても、彼女は可能な状態にはなかった。
僕が渡したハンカチも使い、先生は応急処置を施す。
僕はその横で、彼女の名をひたすらに叫んだ。
2009/06/26 22:00
[130]L
その時、僕らの前に空色と、からし色の二匹が現れた。
とは言っても、血や泥で汚れてしまっているが。
一匹はわからないが、一匹はダリルさんだ。
ダリルさんが喧騒に負けぬよう、大きな声で話しかけている。
それは僕にも向けられているようだが、それを聞いている余裕などない。
というわけで、何を話していたのかはわからない。
状況から把握できることは、ダリルさん達がアトラさんをどこかへ運んでくれるということ。
処置を済ませた先生は、彼らの背に傷ついたアトラを乗せる。
走り去る彼らの後ろ姿を見ながら、僕は祈った。
カシスが、ラクーアが、彼女が救われるようにと…―。
2009/06/27 21:03
[131]バートン
「ルーク、気持ちはわかるが、私達にはやらなければならないことがある」
目を閉じて、あの曇天の下、砂浜で彼女と話したときのことを思い浮かべる。
「そうですね」
あのときアトラは決して言わなかった。助けて、と。
けれど、言わずともその声は届いていたんだ。
目を開き、現実の世界を見つめる。
「すみません先生」
雨と血に濡れた、酷い世界を。
これが終わるのは、
悪魔の子が滅びたとき
あるいはカシスが…滅びたとき。
決して後者であってはならない。
それを防ぐために、僕は今何ができるのか。
答えは1つ。
先生となら、困難も乗り越える自信がある。
「僕、もう大丈夫です」
目前に聳え立つ城を見上げ、僕は決意を固めた。
短剣を強く握りしめる。
「行きましょう」
力強く頷く先生が、なお勇気を与えてくれた。
2009/06/29 22:41
[132]L
レナード軍が大勢いることを予想し、恐る恐る半開きの大きな扉をくぐる。
しかし城の中は、整然としていた。
荒らされた様子も無ければ、血痕もない。
「なんだか…何もなさそうですよ?」
「油断してはいけないよ。慎重に進むんだ」
そう言われ、前をしっかり見据える。
それにしても、とても広い。
天井はとても高く、立派なシャンデリアがぶら下がっている。
目の前の階段もとても大きい。
一体、この広い城のどこにレナードや、レナード軍はいるのだろう。
右手にアトラの血糊のついた短剣、左手には先生のコートの裾を持って、怖々と進む。
広い城の中に、僕らの足音だけが響く。
先生には行くべき場所がわかっているのか、足取りはしっかりとしていた。
辺りを見回しながら、階段の1段目に足を掛けた時。
何かが僕の帽子をかすめた。
「な…わ、わあっ!!!!」
2009/07/22 22:39
[133]無玄
「大丈夫かい?ルーク」
先生は振り向く。そして僕の後ろの方を見て悲しそうな目をした。僕はその視線の方に目を向けた。
そこに倒れていたのは…、
傷だらけの狼だった。
「うわぁっ!!」
僕は驚いて先生にしがみつく。
先生は怯える僕の背中に手を置きながら
「アトラ達の先発軍のアクーラだろうね、
可哀相に…。」
と山高帽のつばをさげた。
「どうして、こんな…。」
僕の中にどうしようもない悲しさと悔しさと怒りが込み上げた。誰に対してとははっきり言えないが、押さえ込むだけで精一杯の強い感情だ。
「…けれど、これではっきりしたね。」
「何がですか…!!」
この抑え切れない強い感情の矛先が先生に向いてしまったことを、僕はすぐに後悔する。
しかし先生は何も気にしていないように僕を見て、優しく頬笑んだ。
「大概は、建物の中にいる黒幕は、
一番上か一番下にいるものさ。
そして 彼(アクーラ)は上から落ちて来た。
ということは、黒幕が上にいる確率が
高いということだ。」
「いつもの…勘ですね、先生。」
僕はいつものセリフを口走る。このやり取りのおかげか、少し雰囲気が和らいだように感じた。僕と先生はにこりと笑い合うと傷だらけのアクーラを優しく壁側に動かして、 勝つことを、この国を守ることを約束した。
それから僕らは城の最上階へと向かった。
2009/07/27 16:02
[134]バートン
階段を上がり、最上階を目指す。
そういえば、ここの玄関ホールは、フォルセンスのフェルーゼン家の城と似ている気がする。
静か過ぎるところまでそっくり。
今にも執事のクロイさんでも出てきそうだ。
ほらそこに、立って…
「えぇっ!?」
ありえない!
クロイさんはもう…というかここは孤島カシスだぞ?
「どうしたんだい、ルーク?」
「あ、あれ…」
彼を指差し、思わず後ずさりする。
「ほう…私が見えましたか。気配を消していたのですが…やはり秘宝の力は伊達ではないらしいですね」
闇から出て来たそいつは、クロイさんなんかではなかった。
携えたナイフや口の周りには、血糊がべっとりとついている。
薄紫の彼に、僕らは見覚えがあった。
「あなたは…」
先生の険しい顔が、一瞬緩んだ。
「トールスさん!」
2009/08/10 13:09
[135]バートン
間違いなく、トールスさんだ。
けれど何なのだろう。この違和感。
よく見ると、彼が歩いたであろう場所には、一筋の蘇芳色の線が残されている。
それを辿り行き着いたぼは、彼の右の後足。
違和感正体はこれか?
「足、大丈夫ですか!?血が…」
僕の問いに対して、何も答えようとしない。
心配になって駆け寄ってみる。
そして足に手をのばした、その時。
「ルーク!」
先生の声にはっとし、振り返る。
そこには鋭い牙をむき出しにした、殺意に満ちたラクーアがいた。
このラクーアはもう…トールスさんじゃない。
僕は身をひるがえし、間一髪のところでよける。
転がる力を走る力にかえ、とにかく一目散に逃げた。
何故こんなときに限って秘宝の力は使えないのだ。
あの力があれば、きっともっと速く走れるのに。
…彼の足の怪我がそのスピードを徐々に奪っている。
それが僕にとっては唯一の救いであった。
だがしかし、もう駄目だ。
紫のラクーアが、もうすぐ後ろにまで来ている。
2009/08/16 15:21
[136]無玄
紫のアクーラが僕を鋭い爪で捕えようとした瞬間、僕は彼の前から消えて見せた。いや、かっこよく言うのはやめよう。…ただ単に転んだだけだ。こういう時に限ってドジを踏むんだ、僕は。
僕は、恐る恐る振り向く。そこには血に飢えた獣がギラギラした瞳で僕を見つめていた。どうして、彼をトールスさんだと思ったんだろう。でも、あの時聞こえた声は確かに…でも…。様々な考えが頭の中をぐるぐる回る。そんな僕にお構いなしに紫のアクーラは爪をたてた片手を高く振り上げた。僕は怖くて顔を背けた。刹那、僕の視線の先で、後方から投げられた石の破片が僕の足元で大きくバウンドした。そして、僕の前に居る彼の手首と左目を傷つけた。
「ルーク、こっちだ!」
声の方を見ると先生が僕に向かって手を伸ばしていた。僕は必死に立ち上がる。アクーラが痛みに悶えている間に先生の元に。けど それよりも…速かった。紫色の影は僕を追い越して、自分に手傷を負わせた相手に向かって猛進する。相手はもちろん…
「逃げて…逃げて!先生!」
僕は叫んだ。けど、先生は動かなかった。いや、動けなかった。または動こうとしてたのかもしれない。それでも、僕が振り向いて叫んだ時には、もうアクーラと先生の間は数mもなかった。
このままじゃ…先生が…。
「先生!!!!」
でも、僕には何も出来ない。誰でもいい。誰か、誰か…
「誰か…助けて!!」
−ガキッ
それは上から降って来た。そして先生とアクーラの間にサーベルが突き刺さり、金属と金属が交わる音がして…、現れたのは紫色の青年だった。
「全く…本当に俺とこいつを勘違いするとは。」
青年はちらりと僕を見る。それから正面を向くとぽそり
「ま、俺も悪いか…。」
と呟いた。
「本当に?本当にトールスさん? なんで…?」
2009/08/20 11:05
[137]バートン
先生は応戦するつもりだったようで、両手を構えていた。
呆気にとられ、先生がその手を降ろす。
「話はあとだ!先に行きな!」
「でも…」
先生は躊躇する僕の手をひく。
その表情から、ここは従うべきであることが汲み取れる。
心配はあったが、先生に逆らうわけにも後について行かず走り出す。
その時、トールスさんは小さく言った。
「小僧……こういうのは自分で落とし前つけるもんだぜ?」
その言葉に1度だけ振り返る。
こんなことは考えたくないが、その言葉が彼の死を意味しているように聞こえたから。
紫の2頭のラクーアの力は互角らしい。
両者一歩たりともひこうとはしない。
こうして見ると、2頭の違いはよくわからない。
しかし、片方からはトールスさんらしさが見られた。
彼は一瞬だけにやりと笑みをつくったのだ。
それに安心し、僕はそれ以降振り返ったりはしなかった。
2009/09/18 22:27
[138]バートン
「ルーク、怪我はないかい?」
長い廊下を駆けながら、先生は僕に問う。
実は転んだ時にすりむいた膝が痛んでいる。
しかし先生に心配はかけられない。
「平気です!」
僕は当然ながらそう答えた。
それ以外会話はなく、ひたすら走った。
廊下の突き当たりの鉄の扉を目指して。
到達する頃には、僕も先生も肩で息をしていた。
それは扉というより、穴に填められたまったいらな鉄の板のようだった。
僕はそれを勢いよくあけた。
つもりだった。
…開かない。扉が開かない。
押しても開かない。ノブもないから引くことができない。
鍵穴も見当たらない。
今まではパズルがあったりもしたが、それすらもない。
勢いに任せて何度も体をぶつけるが、それでも開くはずもなかった。
わずかに開いた隙間から漏れる光。
それが余計に絶望感を増大させた。
「ここまできたのに……」
肩を落とす僕に、先生は言った。
「解けないナゾは絶対にない。よく考えてみよう。……ルーク、これは使えるかもしれないよ?」
先生が差し出したのは、扉の横に立て掛けられていた鉄の棒。
先は薄く、平べったくなっている。
ナゾ 開かない扉
押しても開かない。
引くことも不可能。
鍵穴もパズルもない。
使えそうなのは先が平べったくなった一本の鉄の棒。
一体どうすれば…
(答えは下に)
「わかった!」
僕は平べったくなった先を僅かな隙間に挿し込み、反対の端を力いっぱい横に押した。
初めはかなりの力を要したが、ある程度開けると急に軽くなり、僕は転びかけた。
そう、これは横に引く扉だったのだ。
「大丈夫かい?」
「はい……」
そしてその向こうにあったのは…
2009/11/30 02:33