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Snow Licht

かれこれ2年前に書いた小説を、リメイクしてみました!

※アテンション!※
・物語の都合上オリキャラが出ます。
・俺設定です
・デスコールは出ません

以上の事柄がダメな方はブラウザバック推奨です。

2016-04-16 22:23:36


※プロローグ※
~幻の里~


 暗い。闇のように暗い部屋だった。
 窓が無いのか、風が通る感覚は無い。だが、その割には空気が濁っている気配は無い。

 ぽっと、灯火が生まれた。蝋燭だった。人影が蝋燭を持って部屋に入ってきたのだ。
 人影が動くたびに、灯火は追いかけっこをする様に辺りを照らす。
 部屋は書斎のようだった。本や束ねられた紙が本棚を埋め尽くしている。
 人影はその中の一冊を取り、床に座る。蝋燭立てを左側に置いて。
 その本はスクラップブックのようだった。人影はまるで謳う様に読み始めた。



 昔、気が遠くなるような遥かな昔。とある場所に、1つの里があった。
 その里には高度な知識、技能を備えた民達が暮らしていたという。
 彼らの技術の1つに雪がある。光り輝く雪――
 常に降り続けるその様は、まるで守護するかのよう。
 外の民達は里のことを『光の雪』の意を込め『Snow Licht』と呼び、恐れ敬い、親交を深めていた。
が、ある時を境に里は姿を消し、2度と民達は現れる事はなかったという。
 時が経ち、我等の記憶から『Snow Licht』が姿を消そうとしているが、今でもわが国、イングランドの何処かに存在しているといわれている。
                          
                         ――アンドルー・シュレーダー著
                     
『幻の里に関する一考察(一部抜粋)』

 パタンと、スクラップブックを閉じる音が響く。
 蝋燭の灯に照らし出されたその顔。瞳を閉じた横顔は、何を語ろうとしているのか。
 白銀と見紛う髪が、揺れる。蝋燭の灯に浮かび上がる様は、日没の陽光を受けた海のよう。

「……必ず、取り戻す」

 何処か決意を秘めたその声を聞いた者は、居たのだろうか……

 いつしか蝋燭は燃え尽き、部屋は深遠なる闇に落ちていった……――

2016-04-16 22:26:03


※第一章※
~出逢い~



雪が、冬を迎えたばかりのロンドンに降り始めていた。
風に乗って舞う様は、まるで天使が落とした羽のよう。
ひらりとひらりと舞い降りては、水へと還り消えていく。
初めは舞うように降り始めた雪も、時間を追うごとに強さを増し、午後10時を過ぎる頃には、ロンドン中に雪化粧を施した。

「ふむ、雪に包まれたロンドンも実に美しい」
エルシャール・レイトンは、そんなロンドンを自身の研究室の窓から眺めていた。
彼は、デスクの右端に置いていたティーカップを取り、まだ湯気のたっている紅茶を一口飲む。
自然に自身のデスクの上に視線が行く。書きかけの書類に、本棚にしまいきれない膨大な資料が乱雑に積まれている自らのデスクに。
今日中にこの書類を片付けねば……。どうせ、この雪では車で我が家に帰る事は不可能であろう。
いつもの様にここに泊まる事も悪くは無い。

そう自問する彼の耳に、スースーと可愛らしい音が届く。
それを聞きレイトンは口元を綻ばせる。彼の背後にあるのは赤色のソファ。そこには水色のハンチング帽を被った少年が眠っていた。
自らレイトンの一番弟子を自称する少年、ルーク・トライトン。彼の両親が仕事の関係で、2週間預かってほしいという申し出を引き受け、昨日からレイトンと暮らしている。
先程まで、レイトンに渡された本を読んでいたが、流石にこの時間だ。眠くなるのもおかしくは無い。
レイトンは微笑を浮かべ、ルークに毛布をかけてやるべく、椅子から立ち上がろうとした。

その時だった。

彼の背後――数秒前まで眺めていた屋外――で、膨大な質量の何かが、屋根から落下した。その威力は激しく、衝撃が窓に伝わりギシギシと軋む音をたてた。
それは屋根に積もっていた雪だった。かなりの量が落下したのだろう。山の頂上が研究室の窓から見えるほどだった。
だが、落ちてきたものはそれだけではないことを、レイトンの目は捉えていた。
考えるより先に身体が動く。
突き動かされる衝動のまま、レイトンは研究室を飛び出した。

2016-04-17 21:28:15


勝手口を勢いよく開けた途端、目の前を吹雪が弾けた。
肌を刺す寒風がコートが暴れさせ、シルクハットの鍔を抑える手が凍てつく。
進行を阻むかのように大地に降り積もった雪をひたすらに踏みしめる。額に汗が張りつき、呼気が乱れ始めた頃、ようやく目的地に辿り着いた。
レイトンの腰の高さを有に越える程の雪山が、そこにある。研究室からもれる明かりに照らされ煌めく様は、いっそ見惚れてしまう程に美しかった。
だが、それだけではないものを、レイトンの目は捉えていた。
雪の中にある黒い塊。近づく程にそれが何なのか、はっきり視認することができた。
「なんというこだ」
冷静沈着な彼から滲み出る、困惑と焦り。
一見塊の様に見えたそれは、黒髪だった。こ の雪の中に、人がいるのだ!
レイトンは手作業で、雪の山を慎重に崩し始めた。一歩でも間違えば、中の人物は崩壊の渦に巻き込まれ、二度と出てこられないことを確信しているからこそ、作業は慎重を極めた。
 そして、シルクハットの上部に、雪が堆積し始めた時、とうとう救出することが叶ったのだ。
「しっかりしなさい!」
強い口調で呼び掛け顔を覗きこんだ途端、動きが止まる。
寒さで凍てついた顔、固く閉じられた瞳。顔に残るあどけなさは、まだ十を少し過ぎたくらいの少年のものだった。
ふっふっと、短く荒れた呼気が、白い煙となって溶けていくのを見て、一先ず息があることに安堵する。
何故屋根から落ちてきたのかはナゾだが、考えるのは後だ。
 とにかく今は、彼の冷えきった身体を何とかしなければ!

「先生! どうかしたんですか!」
 少年を抱き上げ、来た道を振り返ったレイトンの目に、毛布を身体にくるませたルークの姿が映った。
 異変を感じ、眼を覚ましたのだろう。いいところに来てくれた。
「話は後だ、ルーク! その毛布で、この子を包んで研究室に戻る! 手を貸してくれ!」
「はっ、はい!」

 2人は協力して、少年を研究室の中に連れて行った。




 そして、この出逢いが、新たな冒険の始まりになろうとは、このときの彼らは気づきもしなかったのだ――

2016-04-17 21:30:19


朝になった。
 昨夜まで、重い雪雲が空を覆っていたことが嘘に思えるほど、柔らかな陽射しが降り注ぐ。
「う……ん」
 その陽射しがカーテンの隙間から射し込み、テーブルに突っ伏すようにして寝ていたレイトンは、眼を覚ました。
 重い瞼(まぶた)を開けると、昨日雪の中から助け出した少年が力なくソファに横たわっていた。
 硬く閉じられた瞳。一瞬ひやりとするが、お腹の辺りが呼吸によって膨らんだり、縮んだりする様を見て、ほっと安堵の息を漏らす。だが、すぐにその瞳は険しくなる。
 助け出した時、彼の身体にはたくさんの傷が刻まれていた。屋根から落ちたのだ、怪我をしていてもおかしくは無いが、明らかに落下によって出来た傷ではなかった。そもそも何故、こんな少年が、屋根に居たのだということ自体、疑問に持つべきなのだろうが。
 ――おそらく、この少年は何者かに追われているのだろう。もしかしたら、その命までも……
 その寝顔は本当にあどけない。向かい合わせに置いてあるソファに眠るルークと対して変わらない、ただの少年のものだ。そんな少年が何故……。
「う~ん」
 ふと、後ろのほうから声がした。視線をやると、ルークがもぞもぞと身体を起こしているのが見える。
 少し寝癖がついた茶色の髪。まだ焦点の合わない寝ぼけ眼を手でこする姿に、少し笑みが漏れる。
「おはよう、ルーク。よく眠れたかい?」
 途端、びくっと身体がネコの様に跳ね上がり、慌ててこちらを見て言った。
「はっ、はい! おはようございます、先生!」
 元気に挨拶を返した彼だが、レイトンの後ろを見て、表情を曇らせる。
「どうしたんだい?」
「まだ目が覚めていないんですね……。大丈夫なのでしょうか」
 やはり、突然表情が曇ったのは、彼の心配をしたからなのだろう。
 レイトンはそんなルークに、優しい口調で話す。
「昨夜よりも呼吸が安定しているからね。早くても今日中には眼を覚ますのではないかい?」
 レイトンの言葉を聞いて、ルークの表情がお日様の様にぱああっと明るくなった。さっきの曇り空はどこへやら。
「そうですよね!きっと今日、起きてくれますよね!」
 トレードマークの水色のハンチング帽を被りながら、彼は嬉しそうに笑う。
「ははは、急に元気になったね。――では、ルーク。そろそろ朝食を食べようか」
「はい! 今、紅茶の用意をしてきますね!」
雪のロンドンに、紅茶の芳しい香りが漂ってきたのは、数分後だった。

2016-04-17 21:31:34


朝食後、レイトンは市街地に出ていった。ぼろぼろになってしまった少年の新しい服を調達する為に。
 留守を任されたルークは、昨日レイトンから借りた本を読むことにした。
 少年は寝ているのだから、物音を立てないように静かに過ごす。相手への心配りが出来てこそ、立派な英国紳士である。あくまで自論だが。
『イングランドの伝説』と題されたその本には、大昔から語り継がれる伝説を、子どもにも解りやすく論じられており、ルークはすぐに、読書の世界に耽っていた。
 だから、気付くのが遅れてしまった。
微かに届いた異音。 ハッと見やると、少年がうなされていた。
眉間に刻まれる深い皺。苦悶に歪められた、その額には大量の汗が光る。
「だっ、大丈夫!?」
 ルークは、持っていた本を投げ出して、慌てて少年に近づき、額に右掌をのせてみる。
 熱湯に手を入れた、そう感じる程に少年の身体は熱かった。
ゼーヒューと、荒い呼吸が耳に絡み付く。
「待ってて! 今、水持ってくるから!」
 そう、少年に言い、台所へ駆け出そうとした途端、ガクンと身体が後ろに引っ張られ、右手首に痛みが走る。
振り返ると、薄く瞳を開けている少年が、自分の右手首をガッチリと掴んでいた。
少年は肩で息をしながら、カサカサに渇いた口を動かす。
「駄目……だ。行く……な」
焦点が定まらない、虚ろな瞳に自分の顔が映る。
「駄目だよ! その身体で!」
 必死に抵抗するが、まったく振りほどけない。少しでも動かせば、骨が折れてしまうのではないのかと恐怖を感じるほど、鬼気迫る力が籠っていた。
 少年は、頭を振って、叫ぶ。
「駄目だ! 逃げろ! そっちに行くと、死ぬぞ! 逃げてくれ!」
 そこでようやく彼が夢を見ていることに気づいた。
 その薄く開いている眼に映るのは、途方も無い恐怖。
 ルークは、少年の目線になるよう方膝をついた。
「大丈夫だよ。ここには君を傷つける者は何もないから。……誰も死なないから。大丈夫だよ」
 優しく、ゆっくりルークは少年に語りかける。少年の荒い息遣いが、耳に届く。
怯える彼の瞳を一身に受け、心に届くことを願い、もう一度。
 
「大丈夫だよ」
突然、糸が切れた操り人形のように、がっくりと少年の身体から力が抜けた。
ソファから落ちかけ、傾ぐ身体。
「わわっ!」
 咄嗟にルークは少年を支えようとしたが、支えきれず、少年に押し倒される形で床に倒れた。必死に動こうとするが、無駄だった。
 上に乗っている少年の身体は依然として、熱い。何とかしなければ!
 思いが通じたのか、はたまた偶然か、研究室の扉が開かれ、シルクハットを被った男が入ってきた。
「レイトン先生!」
嬉しさから、思わず大声が出てしまう。
「ルーク! 一体何があったんだい!」
手にした紙袋を床に置き、珍しく慌てた様子で、2人を助け起こした。

 



 ――少年の夢の、そこに秘められた過去を知ることになるのは、まだまだ先の話……。

2016-04-17 21:32:56


※第二章※
~目覚め~




 
 この世の地獄を思った。
 頭上にあるはずの雪白の天井には、重く淀んだ煙が垂れ込み、その影を見ることができない。そのせいか、平時より天(そら)が低く感じ、手を伸ばしたら届くのかという錯覚を抱く。
 地上には、まるで爆発でも起こったかのように無数の穴が点在し、倒壊した家屋が瓦礫の絨毯と化して、足の踏み場が無いほどに地面を埋め尽くす。
 濃厚に漂う熱を持った煙が喉に絡みつき、瞼を刺激する。風が吹き荒れるたびに、煙はまるで生きているかのように渦を巻きうねり続ける。土産だといわんばかりに、大量の飛び火を運んで――
 そんな空間に少年は、ただ一人突っ立ている。体には無数の擦り傷を拵え、いたるところが煤で汚れていたが、それすらも気付いていないように、ただ一点を見つめている。
「……ぁ」
 声にならない声。震える唇。見開かれた瞳に映る世界――





 天を焦がすほどの灼熱の炎が、全てを埋め尽くしていた。天も、大気も、地も、何もかもを全て飲み込んで。
「……ぁっ」
 灼熱の檻の少し手前に蠢く謎の影。少年は無意識に走り出す。
「駄目……だ。行く……な」
 炎の熱にやられたのか、声が喉に張り付いてうまく出ない。それでも、少年は駆けるのを、声を出すのを止めない。
 とうとう、少年は影を捉えた。離さぬよう、これ以上進まぬよう、渾身の力を込めてその手を握りこむ。捕まえた影は何かを必死に訴えている。
「駄目だ! 逃げろ! そっちに行くと、死ぬぞ! 逃げてくれ!」
 あらん限りの声で少年は叫んだ。影は、驚いたように身体を跳ね上げる。数秒の沈黙を経て、影は少年の前に屈みこみ、その唇を開いた。
――大丈夫
 ただ一言。聞き取れたのは、それだけだった。
 その言葉は、赤く染まる心を癒す青き光の奔流と成って、少年の耳を、声を、心を、意識を包み込んだ――

2016-04-17 21:35:11




「――っ!」
 少年は目を覚ました。ゼーゼーと荒れた息遣いが、自分の口から漏れる。
 視界一杯に、夜の帳が広がっていた。
 夢、と呟いた瞬間に激痛の波が全身を襲う。痛みによって絡めとられそうになる意識。少年は唇を噛むことで、何とか凌いだ。
 もう一度瞳を開く。視力が回復したのか、先程よりも闇に目が慣れ、周囲の様子が把握できる。
 最初に目に映ったのは、天井だった。今、室内にいると理解するには十分な情報だ。ゆっくり体を起こしてみる。少し動く度に筋肉が悲鳴を上げるが、先程の波は過ぎ去ったようで動かせないことは無い。
「ここは……」
 少年はここに至るまでのことを思い出す。逃げ切る為に屋根から屋根へ走り、滑り落ちたことを。その後の記憶が無いということは、この近くで落ちたのだろう。
 彼は、自分の体を検める。丁寧に包帯が巻かれていた。この部屋の主が助けてくれたのだろうか。
「だとしたら、早く出ないと」
 迷惑をかけてしまう前に。
 行動に移そうとした瞬間。
「……う、ん」
 心臓が口から出そうになった。何かが自分の近くにいることに、今更気付く。
 ザーッと、風がなびく音が聞こえ、雲をさらっていく。曙光が部屋を満たし、今まで見ることができなかった光景が目に飛び込んできた。自分の左手に寄り添う小さな手を。ソファに頬を預けるあどけない寝顔を。
 年齢は自分より少し下だろうか、心地よく眠っているのだろう。少し開かれた口から涎が垂れている。
「困ったな」
 今動くと完全に起こしてしまう。かといって、このまま此処にいるのは……。
 この逡巡が、彼らの運命を決めた。
「う、ん」 
 寄り添っていた手が動き、閉じられた瞳が開かれる。薄闇の中でも分かる、透き通った薄茶色の瞳と交わった、少年の闇色の瞳。
 数秒の沈黙を経て、薄茶色の瞳に喜びの色が満ちる。
「良かった、目が覚めたんだね!」
 嬉々とした声が部屋に響いた瞬間、咄嗟に、本当に咄嗟に、少年は目の前の彼を突き飛ばしてしまった。

2016-04-17 21:36:05




 突然の事に体が反応しない。ビュッと風を切る音が、鼓膜に突き刺さる。一秒にも満たない時間、まさに一瞬の間に、景色を置き去りにして、ルークの体は壁面に叩きつけられた。
 背中に強い衝撃を感じ、息が詰まる。頭にチカチカと星が瞬き、ルークは猛烈な眩暈に襲われその場に蹲った。
 前方から、何かが床に落下する音が聞こえた。ルークは痛みに滲む視界の先に、少年を見つけた。彼もまた、ルークを突き飛ばした反動で床に落ちたのだろう。
 体に力が入らないのか、起き上がろうと上体を動かす度に、ビクンッと体が震えている。
 お互いに痛みに顔をしかめ、床に蹲っている。その光景が何故か、たまらなく可笑しくなった。
 不意にルークは、くっくっと体を震わせ笑い始めた。目の前の少年はその姿に唖然としていたが、伝染したのだろう。緊張に強張っていた顔が弛緩し、唇が緩やかな弧を描く。
 次第に光を帯びていく室内に、2人の声にならない笑いが満ちる。

 突然、2人の片腕に何かが触れ、優しく引き起こされる。ルークにとっては馴染みの気配。レイトンだ。もしかしたら、見守っていたのだろうか、少し安堵した空気を感じる。
 少年も何かを感じたのだろうか。引き起こされる腕に力を込め、警戒の色を瞳に浮かべていたが、ルークの姿と彼の空気に、次第に力が緩み、すすめられるままにソファに腰をかけた。
「……あの」
 隣にルークが座るのを見計らって、少年が口を開いた。まだ声変わりをしていない、少し高く丸みを帯びた声だった。
「なに?」
 ルークが問いかけると、少年は膝に置いた掌をぎゅっと握り込み、視線を向けて言う。
「突き飛ばしてごめん。 助けてくれてありがとう」
 最後の言葉は、眼前のソファに腰掛けたレイトンにも向けたものだった。
 レイトンとルークは顔を見合わせ、声を揃えて答える。
「どういたしまして」
 帽子の鍔を直す仕草もシンクロした。少年は、ぷっと吹き出し笑いをする。
「自己紹介が遅れたね。私はエルシャール・レイトン。ここ、グレッセンヘラーカレッジで考古学を教えている。意識が戻って本当に良かった」
 差し出された手に、少しだけ戸惑う。レイトンは何も言わず、待った。
 やがて、その手に吸い寄せられるように、少年の左手が重なった。確かな力で握り返される。
「俺は、ネージュです。助けてくれてありがとうございました、レイトンさん」
 ルークは、その手に自分の手を重ね、彼らしい元気な声で言う。
「僕は、ルーク。ルーク・トライトン! よろしくね、ネージュさん」
「ネージュでいいよ。ルーク、こちらこそ宜しく。ごめんな、突き飛ばしてしまって」
 ルークは首をぶんぶんと振って、気にしていないことをアピールしようとしたが、先に奇妙な、ぐるぐると鳴るような音が下から聞こえる。
 ルークの腹時計だった。みるみるうちに耳まで赤く染まる。笑いを堪えて、レイトンは提案をする。
「お腹も空いたことだし、朝食にしようか」
 反対する人間は、もちろんいない。

2016-04-17 21:37:11


t.o

お久しぶりです!
リメイクしてるんですね!
あの名作をまた読めるなんて!
楽しみにしてます。

2016-05-11 18:15:22


真時(元清瀧)

お久しぶり!

ルーク「やっとこいつ帰ってきました」←

えっと・・・久しぶり!←(二回目)

リメイク!時間があればやりたいなぁ

ルーク「ちなみにリメイクしたい作品は?」

全部!←

更新がんばって!

2016-06-13 17:26:33


※コメ返し※

t.o
久しぶり^^
まだまだ駄作ぶりは発揮すると思うけど、ちょくちょく載せていきます^^
ありがとう。頑張ります☆

真時
お久しぶり!
そして、お帰り!
ありがとう、頑張ります☆

2016-07-31 11:18:37


※第三章※
~旅の始まり~


  昨日の大雪が嘘に思えるほど、好晴のロンドン。雪化粧を施した大地が、光を受けて煌めく様は、いっそ惚れ惚れするほどに美しい。一度(ひとたび)風が吹けば、降り積もった薄雪が風花となって青空を舞っていく。
道行く人々は足を止め、空を仰ぎ見ては、その美しさに目を細めた。今日は良いことがある、そんな予感を感じさせてくれる。
そんな景色を、ルークは研究室の窓から眺めていた。思わず何もかも忘れて、この景色の中に入りたくなる。
いけない、いけないと自制して、視線を前に戻す。
眼前のソファには、ネージュが座っている。彼は、先程ルークが淹れた紅茶の香りを楽しんでいた。その仕草はどこか洗練されていて、「優雅」という言葉がとてもよく似合う。
一口飲むと、驚いたように目を丸くする。
「美味しい!」
小さくガッツポーズ。英国少年として、最高の誉め言葉だ。
くすっと、隣で微かに笑う声。レイトンだ。顔から火が出そうだった。
 そんなルークを見て柔らかな微笑をたたえるレイトン。紅茶の味を優雅に楽しんだ後、ソーサーに置かれるティーカップ。カツンと静かに、確かな音が部屋の空気を震わせる。
「さて、ネージュ。君は、ここロンドンには調べ物をするために来たのだと言っていたね」
 ネージュもティーカップをソーサーに戻す。彼の闇色の瞳の中に、レイトンの顔が映る。
「ええ。そううです」
「その後、襲われた」
 ネージュは首肯する。
 ネージュのことを襲った人物は何者なのか、ネージュ自身もはっきりと分からないという。
 ネージュがロンドンに来たのは3日前。大英図書館や大英博物館を訪れるためだった。外に出たところを急に背後から襲われたのだと先程レイトン達に伝えた。
「何を調べてたの?」
 ルークの問いにネージュは、人差し指をあるものに伸ばした。2人の視線が行き着く先には、一冊の本。ルークが先日レイトンから借りた本だった。
 2人の視線が向いたのを確認し、ネージュが口を開く。
「その本に書かれていなかったか? 幻の里『Snow Licht(スノウ・リヒト)』のことも」
 沈黙は一瞬。
 ガバッという音が響きそうな勢いで、ルークは本を手に取った。勢いをつけすぎて手から落としそうになる。「わわわ」と慌てた声を出しながらも、何とか手に収めることができた。一呼吸おいて、パラパラと素早くページを捲っていく。
「あった! これだよね!」
 時間的には10秒にも満たない早さで目的のページを探し当てたルークは、見開きの状態にして本をテーブルの上に置いた。
 内容を読んでいくルークの声音が、だんだんと熱を帯びていく。 


 『Snow Licht』は遠い昔にイングランドにあったとされている幻の里のことである。
 今の文明では解き明かせない程の素晴らしい技術を持っていたとされていて、里の周りを光の雪がまるで護るかのように舞っていたことから、『光の雪』という意味を込め、『Snow Licht』と呼ばれていた。
 そこまで栄えていた里だったが、ある時を境に突然と姿を消してしまった。
 最初からそこになかったかのように。
 奇跡的に、彼らのことを記した伝記はあるが、ごく僅かしかなく、千年以上も昔のものばかりだ。
 また、その全ての文字が古代文字で書かれているため、千年以上経っても、その全てを解き明かすことはできていない。

2016-07-31 11:21:20


内容を読み終わったルークが顔を上げる。その頬が、わずかに熟れたてのリンゴのように赤くなっていたのはきっと見間違いではないだろう。
 レイトンは、右手を口元に持っていく構えをしていた。彼が考えに考えを巡らせる時の構えだと知っているルークは、あえて何も声をかけないように努める。師の黙考の時間を邪魔しない。彼の一番弟子を名乗る者として、当然の配慮だ。
 ネージュも何かを察しているようだが、あまりにも何も言わないレイトンを心配したのだろう。何かあったのか、と声を掛ける。
 レイトンは、いつの間にか黙考の世界に入り込んでしまっていたことを短い言葉で謝し、口を開いた。
「『Snow Licht 』の存在は、私ももちろん知っている。考古学者であれば知らない者がいないほど、謎に包まれた古代の里だからね」
 言葉を切り、ネージュへと視線を投げかける。
「だが、その本にも書かれているように、彼(か)の里について論じられているものはごく僅かしかない。大英図書館でさえ、見つけることも困難なほどにね。君は、どのような方法で彼の里について知ったのだい?」
 問われることを予期していたのだろう。彼は慌てた風もなく、背後からクチナシ色の鞄を取り出した。一昨日、レイトンが雪の中から取り出したものだった。所々生地が裂けていることが、彼が何者かに襲撃を受けたことを物語っている。
 鞄の中から顔を出したのは一冊のスクラップブック。彼の趣味だろうか、所々に雪の結晶を模したペーパークラフトが貼ってある。
 ページをパラパラ捲りながら、ネージュは言う。
 「これは、この国に伝わる伝説や史実について論じられた文を集めたものです。俺は昔からこういうものに興味があって、機会を見つけてはこれにまとめていました。……あった」
 目的のページを見つけたのだろう。新聞記事が貼られていたそのページには、次のことが書かれていた。

 昔、気が遠くなるような遥かな昔。とある場所に、1つの里があった。
 その里には高度な知識、技能を備えた民達が暮らしていたという。
 彼らの技術の1つに雪がある。光り輝く雪――
 常に降り続けるその様は、まるで守護するかのよう。
 外の民達は里のことを『光の雪』の意を込め『Snow Licht』と呼び、恐れ敬い、親交を深めていた。
が、ある時を境に里は姿を消し、2度と民達は現れる事はなかったという。
 時が経ち、我等の記憶から『Snow Licht』が姿を消そうとしているが、今でもわが国、イングランドの何処かに存在しているといわれている。
                          
                                             ――アンドルー・シュレーダー著
                   
                                             『幻の里に関する一考察(一部抜粋)』

2016-07-31 11:22:31


普段冷静なレイトンの顔に驚きの色が浮かぶと同時に、ルークが興奮で上ずった声を上げた。
「先生! これ、シュレーダー博士が書かれたものですよ!」
 いきなり立ち上がったルークに慄いたのか、上半身を後ろに反らせるネージュ。だが、ルークの言葉を聞き逃さなかった。
「ご存知ですか?」
 レイトンが自分の考古学の師だと伝えると、今度はネージュの顔が驚きに溢れた。
 コホン、と咳ばらいをして、ネージュは言う。
「とにかく、この記事を偶々見つけてこの里に強い興味を持ったんです。しかも、こうして新聞記事に載ったのにも拘らず、この書籍は発売されることがなかったそうじゃないですか。この人は、ロンドンでも5本の指にも入る最高の考古学者です。その人が世の中に出すのをやめたこの里には、そうせざるを得なかった『何か』がきっとある。考古学マニアとしては、是非知っておきたいと考えるのは間違いではないはずです」
「本当にそれだけかい?」
 ネージュの熱弁に、まるで冷水を浴びせかけるように発言するレイトン。ネージュの興奮に紅潮した頬が、瞬間的に元の色を取り戻した。
「……なにを」
 ようやく絞り出した声が震えていた。彼にとっては予想外な問いかけだったのは事実だろう。
 レイトンはまた、右手を顎に当てるポーズをしていた。どうやら喋りながら考えをまとめるつもりらしい。
「確かにわが師シュレーダー博士は、その書籍をある日突然出版することをやめてしまった。理由を聞いても頑なに答えてはくれなかったよ。君が興味を持つ理由も分からないでもない」
 そこで言葉を切り、右手を顎から外す。彼のトレードマークであるつぶらな漆黒の瞳が、今や鋭敏な輝きを放っている。
「だが、君のような少年が、命を狙われてまでも追い求める理由にしては根拠が薄いように感じるのだよ。……君は、考古学マニアとしてではない別の、重大な理由から彼の里について知る必要がある。……いや、行かなければならない理由でもあるのではないのかい?」
 ネージュは沈黙した。否定ではない。明らかにレイトンの言葉は的を射ていたのだろう。
 ネージュの沈黙は長かった。言うべきか、言わざるべきか迷い続けた。この沈黙の長さが、彼の抱えているものの深さを示している。きっと、2人には計り知れないものがあるのだろう。それが分かったから、レイトンもルークも彼が口を開いてくれるのを待った。
 沈黙は5分か10分か、はたまた2,3分だったのか。時間の感覚がマヒするくらいになって、ようやくネージュは口を開いた。
「…………レイトンさんの言う通り、俺には行かなければならない理由があります。その理由は決してあなた達には言えない。知ってしまったら、奴らはあなた達の存在を無視できなくなってしまうから。巻き込みたくないんです」
 ネージュの言葉に偽りは含まれていなかった。本気でレイトンたちの身を案じているのだ。
 レイトンは一つ微笑を浮かべると、シルクハットの鍔を直す仕草をした。
「無理に聞いてしまってすまなかったね。だが、君が狙われていると知った以上このまま見過ごすことはできない。連れて行こう。君が目指している場所へ」
 レイトンの言葉の意味を瞬時に理解したネージュは、キッと眼光を鋭くしレイトンにかみつく。
「何を言っているんですか! 俺はあなた達を巻き込みたくない。さっきそう言ったじゃ――」
「困っている人を助けるのは当然さ」
 ネージュのかみつきも何のその。彼の言葉を遮り、シルクハットの鍔に右手を添え、一言。
「英国紳士としてはね」
 師匠の決め台詞に満面の笑みを浮かべてルークも同じポーズをする。
「僕も、ネージュが辿り着けるように協力るよ! 僕だって、未来の英国紳士なんだから!」
 ついと、視線を師匠に向けて、「止めても無駄ですからね!」と言ってしまう。
 二人のやり取りを見て、毒気を抜かれてしまったのだろう。ネージュはそれ以上反論はしなかった。
「本当にいいんですか? もしかしたら、命だって狙われるかもしれないのに」
 レイトンとルークは同時に頷く。
「自分の命可愛さに誰かを犠牲にはしない。危険なのは承知の上さ。君の目的を果たす力になるのなら、協力を惜しまない」
 差し出されたレイトンの右手をネージュは見つめた。夜の闇をそのまま切り取ったような彼の闇色の瞳。今その瞳には、様々な感情が渦巻いている。だが、沈黙は先程より短いものになった。
 ネージュの右手がレイトンの手をとる。そのまま、自分の額に当てにいくという独特の礼をした。
「……ありがとうございます。レイトンさん。ルーク。」


――遠いどこかで、運命の歯車の回り始める音が聞こえた……

2016-07-31 11:23:15


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