レイトン教授シリーズの攻略
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のつづきです。
約100年ほどむかし、最大の繁栄をみせた二つの王国が、理由も不明のまま破滅した。
それを知るは、その国の民の僅かな末裔のみだった。
王国の破滅はいかにおきたか、それを探るべく、レイトン達はタイムマシンにのって過去へと調査にむかう。
ネグリシャムラの呪縛はいかなるものか
どこかでひっそりとうごめく闇
砕け散る運命のハグルマに
レイトン達は真実を見るか
そして
誘惑の先の目的とは…?
お楽しみに………
2010-08-17 23:50:33
Ewota
ザルシュさんはやがてアイズィーに手を回し、ああ、となげいた。
会場はしんと静まり返り、パトカーのサイレンが鳴り響いた。僕たちはなにもできずに、ただただ佇んだ。
控室で、アンネさんがふせていた。
足早に王国に戻ることがわかったのだ。こんなことがあったばかりなのに。
「アンネさん…」
レイトン先生がはなしかけると、アンネさんはおだやかにわらった。
「話をきいていただけますか」
2011-04-17 14:51:37
Ewota
第9章
大好きなあの日のキッチン
2011-04-19 22:59:56
のなりい
ガルシュ君、自害して・・・・。
ザルシュ君はショックだろうね~・・・・。
一瞬、ランドとヘンリーを思い出してしまった(苦笑)←←
2011-04-21 01:53:50
Ewota
「カルロとの出会いの話なんですが」
アンネさんは白金の髪を耳までかきあげて、恥ずかしげに窓を見た。
すっかり日は落ちて、鏡になった窓ガラスが、アンネさんの寂しげなまつげを映している。
「彼とは、大学での小さなパーティーで出会ったんです」
まさに一目惚れだったらしい。友人がヘッツィさんの恋人だったらしく、二人がキューピッドとなって、カルロさんとアンネさんを恋仲にした。
4人は同じ屋根のしたで仲良く同居した。アンネさんは両親から借りていた高級マンションより、4人ぎゅうぎゅう詰めを選んだらしい。
アンネさんは料理好きだった。いつも4人分を作った。
友人と並んで料理をつくっていると、いつもカルロさんは車椅子を器用に乗りこなして二人の足元に寄ってきた。
そして、アンネさんが盛りつけた、サラダやベーコン、ポークビッツを決まって盗み食いしていく。
「あ、カルロまたやったわね!」
「あはははは、ごめんよアンネ」
紳士的で優しい物腰、たまに見せる無邪気な笑顔。アンネさんは、そんなカルロさんとのその時間がなにより好きだった。
二人は幸せだった。お互い表向きではブレッド、アンナとよびあい、家ではカルロ、アンネと本名でよんだ。
でも、互いの身分はしらなかった。
2年たったある日まで。
アンネさんはあるひ、学校内で囁かれている噂を聞いた。
「ブレッドはカルロ・フォード」
アンネさんは自分の父親を陥れたと思っていたエルドマクも、同年代の息子カルロも憎んでいた。
しかし、彼とカルロがおなじ人とは。
アンネさんはカルロさんを問い詰めた。寂しげなYESが返ってきた。
その時のカルロさんは、病が進行して車椅子を乗りこなせなかったし、身体の自由もさらに失われていた。
寂しげなカルロさんの頬が膨らみがなくこけていたのを、アンネさんは覚えていたらしい。
アンネさんはレイトン先生に情報をながして、その後流れているカルロさんに関する悪い情報をもとに、カルロさんを止めようとしていた。
最近新婚生活をはじめているが、アンネさんがキッチンにいるとよく足元まで杖をあやつり歩いてきて、食べ物をつまむらしい。
「まあ、聞いてほしかっただけなんですが」
アンネさんは頬を赤らめて、
「パーティーで彼に会えてよかったです。いや、あってないといけなかった…」
と、口に紅茶をはこんだ。
パーティーの彼は車椅子で食べ物もとらず色白で、イングランド人とは違った顔立ちだった。
アンネさんは「美しい先輩がいる」と聞いていた。だから彼をみたときには、隣で手をとって踊っている友人がなんの光もないように見えたらしい。
アンネさんは照れ隠しに紅茶を飲み干した。
カルロさんが釈放される2週間後が、王国にもどる日になった。
2011-04-21 18:56:40
Ewota
最終章
最期の王国
digest-storyにします。
2011-04-21 18:59:01
Ewota
のなりい、スルーごめんよ[s:0319]
ガルシュくん、自害という最悪の状態に…
考え方が完全な奉公精神だったんですわ[s:0035]そう考えといて〜…[s:0319]
ランドとヘンリ〜〜〜〜〜…[s:0364]
早く奇跡の仮面やりて〜よ〜…←シャラップ
2011-04-21 23:49:04
のなりい
いえいえ、気にしないで~~^^
見事な奉公精神だよね~・・。
奇跡の仮面、おもしろかったy(殴
つまみ食いするカルロさん・・・(笑)
なんだか想像すると微笑ましい光景だね^^
2011-04-24 02:18:30
Ewota
更新にげ申し訳ない[s:0385]
レイトン達が未来にむかっているその時、ウィダードでザルシュが見た光景。
それは大破された町並みだった。
家来が止めるのもお構い無しに、馬車から飛び降りいそいで、ある小屋に駆け寄った。この中にマークがいるという。
しかし走り寄ったザルシュの頭に、こつんと小石が当たった。
「俺達ウィダードのやつが、お前等になにしたってんだ」
民の一人が、片手いっぱいに小石を掴み、こちらを睨んでいる。
「そだての故郷を捨てた野蛮王子め!どうせお前が町を壊すように仕向けたんだろう!腹は分かってるんだ」
ザルシュはなにが起きたか解らず、ぼんやりと立ちすくんでいた。
しかし、合点した。
ガルシュがやったんだ。
どうせあいつが手柄をとろうとして、武力でウィダードの奴を圧迫しようとしたんだ。
だけど失敗した。奴は罪を自分になすりつけるために、兄達を迎えに行く俺を利用した。なんで馬車がわざわざウィダードの町に寄っていたのか、やっと分かったぞ。
ザルシュは小石をぶつけられ罵倒を浴びながら、むくむくと沸き上がる怒りを必死に鎮めていた。こんなことでへこたれていては、地上からうける圧迫を地下に影響させない計画は実行できない。
ザルシュは「すまない」と一言いうと、やおら手を下について、土下座した。
しかしその数日後、ザルシュに「ウィダード永久追放令」が下された。その責任者の名前は、ロッパと言った。
しかも数日後、ザルシュを陥れる出来事がおきた。
ザルシュは追放され、サンステリで地上から帰国した兄達とのんびり政治をしていた。もうウィダードに関わるものか。そんな気持ちだった。
しかしある日、こっそりとアイズィーが忍び込んできた。
「ザルシュ?わたし、アイズィーだ。そなたに会いたくて、つい」
ザルシュはこっそりと城に招き入れ、城の者達とティーパーティーを開いた。アイズィーの為ならと、コックが料理を作る。パティシエはスイーツ、お菓子を楽しく準備してくれた。
ザルシュはアイズィーと、幸せな時を過ごした。
「ザルシュ、こんなものがある」
アイズィーは包みを取り出し、結び目を緩めた。
「なになに?」
ザルシュは身を乗り出し、アイズィーの手元からペンダントが取り出されるのを見た。
「こっそりと準備したんだ、ザルシュの為に…」
「…綺麗だ」
アイズィーは椅子から飛び降り、ザルシュの髪をかき上げた。首にまわし、金具を着け、また髪を降ろした。
ザルシュはペンダントトップをあてがいながら、「ありがとう」と微笑んだ。アイズィーはそのほかにも、ハンカチだったり、香水だったり、沢山ザルシュにお土産として渡した。
ザルシュも嬉しかった。アイズィーから貰ったペンダントを、いつも首にかけていた。
しかしだ。ある日、家来、それも下等兵士が違和感をかんじた。
「私の父は薬剤師をしているので解ります。あの香水の成分も、ハンカチののりも……第一、ペンダント中身が空洞で穴が空いているなんておかしい」
兵士はザルシュからペンダントを貰った。
「いいですか?」
そういって、彼はペンダントを砕いた。
ペンダントからは、白い粉が飛び散った。
嫌な予感がしながらも、ザルシュはハンカチを水で洗うと、水を兵士に渡した。香水もだった。
兵士は臭いをかぎ、透明の液体を粉や水、香水にかけた。
液体が落ちると同時に、粉や水は青黒くそまった。
「…毒薬だ」
兵士が、ぽつりと呟いた。
アイズィーの話によれば、ハンカチ生地に刺繍をしたのも、ペンダントをこっそり作らせたのも、アイズィーだという。
ザルシュがそれを使ううちに、身体に毒薬が蓄積されて死ぬようになっていたのだった。
ザルシュはそれを知った時、マークをこっそり呼び出した。
暗闇の中でカーテンが風に泳がされているのを見ながら、一言だけ命令した。
タララ主義は皆殺しにしろ。
と。
2011-04-24 14:33:39
Ewota
僕らが王国にもどってみると、光景が変わっていた。
家々は崩壊され、人々がこの前まで使っていただろう家具や用品が、散らばって歪んでいた。所々、路地裏から蝿がわいているのもおかしすぎる。いやな臭いも立ち込めていた。
「なにごとだ…」
レイトン先生は立ち尽くし、急いで写真におさめた。
「…あ、あそこに人がいます」
クラウスさんが指指すと、向こうに走って行ってしまった。
「僕達もいこう」
クラウスさんはうずくまる少年を揺さぶった。「この王国になにがおきた、なにがおきた」と話し掛けながら。
少年はくらりと一揺れ二揺れして、ぱたんと地面に倒れてしまった。目はくぼんでいて、足や手には傷があった。
「…………」クラウスさんは手を組み、瞳を閉じて祈りはじめた。
「君を危めたこの事態はなんなんだい」
と、呟きながら。
すると別の路地裏から、足音、それも軽快な子供の足音がした。
「未来の人」足音の主は先生に話し掛けて、ふと目をみやった。やがて事態を飲み込むと、目のくぼんでいる少年を抱き上げ、
「お前も倒されたか」
と言った。
「ショーじゃないか」
「教授さん………。久しぶりだな。
みてみたか?この町の様子を」
「ああ………。
事態がまだ飲み込めないよ」
「無理もない」
ショーは短くいうと、いきなり顔をきりっと引き締まらせた。
「野蛮王子が本当の野蛮王子になった」
「……?」
「ウィダードのみんながサンステリを圧迫しまくったんだよ。はっきりいっちゃえば、いろいろいちゃもんつけて。
ついにアイズィー嬢もロッパ師匠側にまわって、暗殺計画たてるまでいった。
ただ、」
「ただ?」
「その暗殺計画が王子にばれたんだ。アイズィー嬢が特別発注して作らせた、毒薬まるけの品々。
どうしてばれたのかなあ。王子に届けるまでいったのに、王子が数日使っただけで、腕利きの薬剤師の息子にばれたらしい」
「……」
「そしたら暗殺されかけたことに恐怖を覚えたらしくて、狂気に染まったんだ、野蛮王子…」
そしてザルシュは、タララ主義(ネグリシャムラ絶滅を奨励する主義)を皆殺しにするよう国民に命令したらしい。
いままで絶対危めまいと思っていたロッパ「師匠」もアイズィーも。
やがてロッパがザルシュの人気を落とすためにうそぶいた噂が、本当になったという。つまり、殺人好きになり、夜な夜なザルシュに手招きされる少女達が増えたということだ。
ザルシュは次第に人格が崩壊していた。
やがて国民一揆で死ぬのを恐れたロチェスやミダルは、また逃げるように旅行に消えた。噂では、裏切ったとして地上で暗殺されたとも聞く。
シラーマ姫は毎日ザルシュの説得を続けているらしい。
ザルシュはそれに聞く耳をもたず、また国民も鬱憤がたまっていたため、暴走は止まらなかった。やがて、サンステリの国民はウィダードに侵入してきた。
やがてウィダードの町はこうなってしまった。
今、ロッパはザルシュを苦しめつづけたことを激しく悔やんでいるらしい。
アイズィーも、一度でも暗殺を企てたことを悔やんでいるらしい。
しかしだからって、ザルシュが元に戻るはずもなかった。
ザルシュは今もウィダードの死者数を報告される度、まぶたひんむいて高笑いしてるだろうよ。ショーが、ぼんやりと吐き捨てた。
「最悪だろ」……とも。
2011-04-24 15:49:22
Ewota
しかし、そんな悪夢の時間は呆気なくおわった。
騒動が起きてから1ヶ月も絶たないうちに、ザルシュはウィダードの者達に捕まったのだった。
無理もない、彼はただの抜け殻に近かった。狂気にそまったザルシュは判断力も衰えていた。そんな彼が一度(ひとたび)捕まれば、抵抗するその力さえ存在しなかったのだ。
ザルシュが力を失ったと知ると、ミダルとロチェスは旅行から帰ってくるなり暗殺された。
つまり、マルミゲラ家の力は消えた。
しかし、そのツケは必ずどこかで歪(ひず)みをおこす。
ザルシュが力を失ったことで、地上からの(当時帝国主義時代だった)圧迫を受けはじめた。
国民の憤激は、内戦、そしてサンステリ対ウィダードの戦いになってしまった。
アイズィーは戦争に反対した。自分が引き起こしたからだと、そういった後悔もあった。しかしそれだけでない。無抵抗のサンステリを袋だたきにするウィダードのやり方に、疑問をいだきはじめたのだ。
ザルシュは今どうなっているだろう。
ザルシュが地上からの圧迫に抵抗しようともがいていたことは、国民も、アイズィーも、誰もしらなかった。
ザルシュは誰にもしらされず、圧迫に耐え切れず朽ちていった。
無抵抗のサンステリの前に、ウィダードは勝利を重ねた。ついにサンステリは追いやられ、降伏する以外選択をもっていなかった。
2011-04-27 01:21:51
のなりい
毒薬・・・・。
はあ・・・なんだか怖いね・・・。
怖いけど・・・なんか悲しい?
んー・・・よくわかんないけど(おい!)皆、不幸になって・・・。
2011-04-27 01:27:46
Ewota
のなりい
コメサンキュー!
最近返事できへんくてごめんよ……
確かに皆不幸へ下がって行ってるかも…[s:0358]
まあ、話上仕方ないけど;
この話の更新リミットは3日間!レイトン達は王国の最期を見届けられるでしょうか!?
2011-04-28 01:17:18
Ewota
ザルシュはウィダード宮殿の小さな一室に隔離されていたが、やがて兄弟の死を知ると同時に一度広場に出された。
「もう降参以外道はないぞ」
大臣に諭され、ウィダード国民からは蔑んだ目で見られ、ザルシュはその場に座り込んだままだった。
サンステリ国民も、ザルシュの身を思って自尊心を捨てたらしく、「はやく降参の道を」と口々にさけんでいた。
「ザルシュ」
広場に、ロッパが現れた。
「まさか、こんなことにまでなってしまうとは…。私は酷いことをした」
こんなにやせ細ってしまって…。ロッパは呟きながら、頬を涙でぬらした。
「何故お前さんはどんなにウィダードの私に弾圧されても、私を処刑にしようとはしなかったんだ」
「………」
ザルシュは顔を上げた。
ロッパも白い粗末な服を着、手首をしばられ首を繋がれていたのだ。
「君ではなく、私はウィダードとサンステリの国民の手で処刑されるんだ。全ての責任をとってな」
ロッパがザルシュのひざ元に座り込むと、ザルシュの足元に雫が落ちた。
「ザルシュ?泣いているのか」
「………ししょお…」
ザルシュの口からその言葉がもれたとき、ロッパの顎をあとからあとから雫が伝った。
「…こんな私を、お前を苦しめた私を、まだ師匠と思ってくれていたのか…!」
ロッパは額をザルシュの額と付けると、最期に言葉を残した。
「……私の哀れなこと」
昼下がりの処刑場にたくさんの国民が押し寄せた。ロッパは最期まで偉大な英雄と反逆者でありつづけ、一言も言葉を発することなく逝った。戦を起こした張本人として。
ザルシュは降参の道を選んだ。
ただ、ウィダードの大臣にこう伝えた。
「私には弟がいる。かつておまえらがなきものにしようとした、ガルシュエル王子さ。
彼はウィダード国を憎んでいるよ。彼には気をつけることさ」
そして短剣を片手に、ふらりときえてしまったのだった。
2011-04-29 15:07:10
Ewota
二人の別れ
2011-04-29 15:08:21
Ewota
マークはやばい、と思っていた。
ザルシュが森に消えたということを大臣から聞いて、なにか嫌な予感がした。
最後にザルシュがガルシュの話をしたことも怪しい。奴は自分から、卍の正体を話したんだから。
慌てて森に人を引き連れた。
アイズィーはザルシュが森に消えたと聞いて、やはり何かいやな予感がしていた。
ザルシュはきっと、自分だけで全てを背負って消えてしまうつもりなんだわ。直感が冴えていた。
そう、その通りだった。
森周辺は戦で撃ち込まれた大砲の揺れの影響で、地下の鉱物の塊が今にも落ちてきてしまいそうだった。
塊は大きく、この辺りはひとつぶれだ。ザルシュは痩せた身体をなんとか引きずって、鉱物が落ちて自分が葬られるのを待とうとしたのだ。ザルシュは木陰に座り込むのに、力を使い果たした。
しかし。
足音が迫ってきた。若い者の足音はやがて自分に向いてきた。
ザルシュは動く気力がなかった。
「……ザルシュ!!!」
アイズィーの声だった。何故よりによって、ザルシュはふっと息を漏らした。
自分を危めようとしたくせに。
でも、ゆらゆら揺れて今にも落ちそうな鉱物の下に、彼女を置いてはいけない。ザルシュはそう一瞬思った。
右手に握る短剣を鞘から抜き、左手に持ち替えた。そして、彼女に向けた。
「………」
アイズィーは最初はためらいを見せていた。ザルシュもそのまま逃げろ、と安心した。
しかし、アイズィーはすぐにそれに構わず走り寄ってきたのだ!
「こっちきちゃ駄目だあっ!」
思わず大きな声をだすと、アイズィーは一瞬凍りついた。
「…ザルシュ」
「こっちにきちゃ、駄目だ」
「なんで!?」
お構い無しに質問してくるアイズィーに、ザルシュは苛立ちを覚えた。
だが、
「ここは危険だよ。なんで俺がわざわざこんな所にいるのか知ってるの?
……あの上の鉱物が、多分、俺を」
声を出すのがやっとになり、必死に息を喉からだすだけになった。
「…ザルシュも危ないではないか!
…あたし、ザルシュがいないと無理なんだ」
「……じゃあ、なんで……」
「あの時は……。私もおかしくなっていたんだ。だから」
アイズィーは躊躇いの表情を消すと、ザルシュの左腕を取って引っ張りだした。
「……はやく、逃げよう?」
涙をいっぱいためて。
「…いや」
ザルシュは短剣を振り回した。
アイズィーの髪束がざくっと切れた音を聞くまで、ザルシュは抵抗を続けた。
束が落ちて短髪になったアイズィーは、瞳をゆっくりと閉じて、やがてザルシュに抱き着いた。
長い間。
ザルシュもこのまま居たかった。
しかし、ザルシュの視界がもやもやと暗くなっていった。まずい、もう持たない。ザルシュは上を見た。
その時だった。
上でかろうじて地下天井にあった鉱物が、音をたてて落ちてきた。
ザルシュは力を精一杯振り絞り、とっさにアイズィーを突き放した。
「きゃっ!!」
ふらついたアイズィーをさらに突き飛ばし、「ザルシュ!」と叫ぶ「彼女」に言い放った。
「早く地上にいくんだ!」
アイズィーの目の前で巨大な鉱物の結晶が崩れ落ち、その振動で周りの木々が倒れた。アイズィーの目の前は、一瞬にして鉱物の山になっていた。
ザルシューーーッ!!
そうさけんでも返事はなく、ザルシュが居た場所には赤い液が飛び散っていた。
アイズィーは二、三歩ふらつくと、その場にかじりつくように座り込んで、ひとしきり泣きつづけた。
ザルシュが、自分を守ったせいで死んでしまった。ザルシュは最期まで報われない人生をおくったものだ!
あとからあとから苦しみや後悔がわきあがり、泣き声に気づいてやってきたマークに宥められるまで止まらなかった。
しかしザルシュは死んではいなかった。
ザルシュは鉱物がおちる場所の後ろにある洞窟に突き飛ばされ、振動で落ちてきた岩々に右腕を押し潰された。そのときの傷の血が飛び散っていた。
2011-04-29 15:59:36
Ewota
アイズィーはマークに、ザルシュの言葉を伝えた。
そして、地下南部の地下地上の出入口に向かっていた。
その時だった。
「…兄上が亡くなったとは、誠の話なのか…?」
今にも泣きそうなか細い声で、一人の青年がマークに擦り寄ってきた。
「…お前がガルシュエルか」
「私の質問に答えよ、兄上は亡くなったのか!?」
ガルシュエルはマークを揺すり、やがてアイズィーに気付くと
「…兄上はアイズィー嬢を守る為に亡くなったときいたが。アイズィー嬢、お前は兄上を暗殺しようとしていたじゃないかい。
兄上は非情な嫁をとろうとしたぜ」
とひとしきり呟き、
「兄上を守ろうとしたあんたを危められない……」と涙を流した。
「あんた、アイズィー様を殺すために待伏せていたのか」
ガルシュエル、かれもまた長い戦に心身ともに蝕まれ、傷だらげの身体を不気味な笑みをこぼしながら引きずっていた。
「サンステリの王族の朽ち方はひど過ぎる。なぜ皆こうも苦しみながら死んでいく」
マークはそう呟いて、旅行帰りの二人に死刑を告げた時の苦しみを思い出していた。
二人は覚悟していたのか、なにも言わずに処刑場にむかった。そして時がくると、なきもせず、ずっと笑い続けていたのだ。
ガルシュエルは「やはり死んだか」というと、目をがんと開けたままぼたぼたと涙をながし、マークの懐から剣を掻っ攫った。
「なにをする気だ!!」
「…私は兄上と、兄弟とただ平和に居たかったのに!もうその兄弟も兄上もいない…
私に生きる価値はないんだあああ!」
完全に判断力を失ったガルシュエルは、アイズィーとマークの目の前で剣を自らにさした。
「きゃあああ!!」
アイズィーの叫び声が響き渡った。
2011-04-29 16:30:19
Ewota
ザルシュも、いやマルミゲラはもういない。シラーマは国の崩壊を察すると、国と共にきえるのを選んだ。
マークとアイズィー、ウィダード国民はとぼとぼと南部の地下地上出入口に向かい、新しい村を設けた。
救い出されたザルシュとサンステリ国民は北部の地下地上出入口にむかい、そこにもとからあった村に住みはじめた。
お互いに地下への入口を閉鎖し、王国の事を封印したのだった。
皆、その後王国の情報を一切流さなかった。そして時が経ちその存在さえも消えかけ、学者の中で「全てが不明な
幻の王国」
と位置付けられた。
これが、全ての王国の正体だったのだ。
2011-04-29 16:31:01
Ewota
僕達は未来にかえるタイムマシンの中で、残酷な王国の最期にくるしんだ。
「最初にルーク、君を王国につれていくのを拒んだのは、これが理由だったんだよ」
レイトン先生はぼんやりといった。
「この世に解けない謎はない。
しかし、解けたからといって本当に幸せかは、限らないのだからね」
側でカルロさんが、ぼんやりとした目のまま煙草を吸っていた。
「幻の王国、か。
馬鹿馬鹿しいな。勝手にロマンを求めた学者の翻弄だよ」
「私達学者を敵にまわしたな。君も学者のたまごなのにね」
「これはロマンのある幻じゃなくて、ただの呪縛だ。ロマンなんてカッコイイ、ただの欲望の魔に縛られたね」
カルロさんはタイムマシンの中で、こう呟いた。
「僕の実家に出入口があります。いつもは部屋に封印されていますが、特別にあけましょう。バンダナに鍵がぬいつけてある」
「……そうだったね」
カルロさんが初めて、ふっと優しい笑みをこぼした。
「幻の王国は、解き放たれるべきなのですから」
2011-04-29 16:42:13
Ewota
みなさん、有難うございました。
2011-04-29 17:03:58
のなりい
完結おめでとうっ!!
どこまでも残酷で・・・物悲しくて・・・でも読まずにはいられませんでした^^;
やっぱりこれが文才かねぇ・・・。←
最後の最後まで素晴らしい絵が・・・^^
2011-05-01 01:50:25
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