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ルーク少年と黄昏の約束

閻鬼

初めまして。キョウの親類の閻鬼(エンキ)と申します。以後お見知り置きを。
さて、こんな見るからに駄作そうな小説をわざわざクリックして頂き、誠にありがとうございます。
他サイトでも書いているのですが、キョウの提案により、こちらでも書かせて頂く事になりました。

こんな駄作でもご愛読して頂ければ幸いです。

(この小説はキョウと合作しております故、たまにキョウ自信が来る場合もありますが、その時は生暖かく迎えてやってください[d:0163])

2009-09-22 17:53:55


閻鬼

コメがこんなにも沢山……本当に嬉しいです!ありがとうございます!!

ホピホピ先輩
大丈夫ですよ。インターネットに文句はつきものですから。ご注意ありがとうございます。
今日は沢山更新出来そうです(コピってくるだけなんでw)
コメもらう度に嬉しいです!ありがとうございます!!

lily様
初めまして。早々からもったいないお言葉ありがとうございます!上手いだなんて…いえいえ、下手の間違いですよ^^
ですが、凄く嬉しいです。ありがとうございます!

2009-09-22 20:15:48


閻鬼

*

ロンドンの街――おしゃれな建物が立ち並ぶこの空間に、一人の少女が舞い降りて来た。
天使のような羽で身を包み、ふわりと地面に倒れ伏す。人々は彼女の美しさに目を向いた。
繊細な手足、雪のような肌。
身体を覆うかの如くのびる髪は、綺麗な黄昏色をしていた。
だが、誰一人としてその子を助け起こそうとはしなかった。
みんな、彼女が天女のように空から現れ居出たからだ。
美く、か弱いが、どこか妖艶。
少女は煉瓦の道路に倒れたまま、意識を失っている。

やがて彼女の周りに野次馬が出来た。
その野次馬の一人が、「これは警察に言った方がいい」と判断した。
数分後――野次馬をかき分け、やっと少女の前に踊り出た警察は、ある人物に電話した。

このような事件に首を突っ込みたがる"知り合い"に。


*
(レイトン視点)

一行はさっそくレイトンカーに乗り込み、現場へと直行した。

「先生、今回の事件は何なんですか?」

ルークが何やらワクワクしながら尋ねてきた。
久々の事件に興奮しているのだろう。……無理も無い。
先ほど彼にいくつかナゾを出したが、ほとんどあっさりと解かれてしまった。
そのおかげで、私は心底関心させられてしまった。
ルークの推理力は数年前と比べて格段に上がっている。
この私が追いつかれる日も近いかもしれない。


そう……いつか――


レイトンは遠い未来に思いをはせながら、ぼんやりと運転していた。

「それが……"謎の少女が突然降って来た"らしいんだ」

私は少し声のトーンを落とした。

「まるで天使のように……」

「へぇ……これまた不思議な話ですね。でも、それだけじゃないんでしょう?」

さすがルーク。鋭いな。

「あぁ。それが、何を訊いても応えようとしないんだ。名前も名乗ろうとしない。時々口を開いたかと思えば、たった一言――

『シキ』

と呟いたらしいんだ」

「シキ……ですか……何なのでしょうね……」

ルークが考え込む。しかし、今考えても何も分からないと気付き、風景を眺めることにした。

「チェルミー警部も良くわかってるものだ。警察側から依頼を出すなんて」

「えっ?チェルミー警部が?」

「『君ならば何も言わずとも、調査を始めるだろうからね。こちらから電話させてもらった。』だってね」

ルークはふふっと笑い、「そうですね」と呟いた。

* ~ルーク視点~

僕は流れる景色に目を移しながら、目的地に着くことを待ちわびていた。
"天から降って来た謎の少女"。いかにも謎に満ち溢れていて、僕の好奇心を大いに刺激した。
しかも、今回はロンドン警察の敏腕警部、チェルミー警部直々の申し出だ。
警部とは前々から何らかの事件で関わりを持っており、手助け……とまではいかないが、度々お世話になっているのだ。

ふと車が停車したかと思うと、窓から大きな建物が覗いた。
これが"スコットランドヤード"。と呼ばれる、イギリスの首都警察の本部(ロンドン警視庁)である。

僕は先生の愛車から降り、置いて行かれないよう、小走りでついて行った。


* 
(ルーク視点)

警視庁に近づくにつれ、入り口に見慣れた人影が立っている事に気づいた。

「こんにちはであります、レイトン先生」

この人はチェルミー警部の部下、バートン巡査だ。僕と大して変わらない小柄な背と、ちょこちょこした歩き方が目をひく新人さん。
警部とペアで行動してる事が多く、大きな上司と小柄な部下は"でこぼこコンビ"と名付けるに相応しいかもしれない。

僕と先生は丁寧に挨拶した。

「バートンさん、こんなところで何をしているんですか?」

「レイトン先生を中へ案内するよう言われて来たであります」

あっ、そっか……。
僕達初めてだもんね。


バートンさんに案内されたのは、少し奥に行った、突き当たりの部屋だった。

「この中であります」

バートンさんが言った。
いよいよかぁ……。
僕は緊張と楽しみでいっぱいだった。

「チェルミー警部、連れて来たであります」

ドアを二・三度ノックして、巡査はどうぞと開けた。
先生の後に僕も続く。

2009-09-22 20:22:34


閻鬼

あっ、いろいろとミスが生じました!
すみません!!訂正訂正……

2009-09-22 20:24:28


閻鬼

*

ロンドンの街――おしゃれな建物が立ち並ぶこの空間に、一人の少女が舞い降りて来た。
天使のような羽で身を包み、ふわりと地面に倒れ伏す。人々は彼女の美しさに目を向いた。
繊細な手足、雪のような肌。
身体を覆うかの如くのびる髪は、綺麗な黄昏色をしていた。
だが、誰一人としてその子を助け起こそうとはしなかった。
みんな、彼女が天女のように空から現れ居出たからだ。
美く、か弱いが、どこか妖艶。
少女は煉瓦の道路に倒れたまま、意識を失っている。

やがて彼女の周りに野次馬が出来た。
その野次馬の一人が、「これは警察に言った方がいい」と判断した。
数分後――野次馬をかき分け、やっと少女の前に踊り出た警察は、ある人物に電話した。

このような事件に首を突っ込みたがる"知り合い"に。


*
(レイトン視点)

一行はさっそくレイトンカーに乗り込み、現場へと直行した。

「先生、今回の事件は何なんですか?」

ルークが何やらワクワクしながら尋ねてきた。
久々の事件に興奮しているのだろう。……無理も無い。
先ほど彼にいくつかナゾを出したが、ほとんどあっさりと解かれてしまった。
そのおかげで、私は心底関心させられてしまった。
ルークの推理力は数年前と比べて格段に上がっている。
この私が追いつかれる日も近いかもしれない。


そう……いつか――


レイトンは遠い未来に思いをはせながら、ぼんやりと運転していた。

「それが……"謎の少女が突然降って来た"らしいんだ」

私は少し声のトーンを落とした。

「まるで天使のように……」

「へぇ……これまた不思議な話ですね。でも、それだけじゃないんでしょう?」

さすがルーク。鋭いな。

「あぁ。それが、何を訊いても応えようとしないんだ。名前も名乗ろうとしない。時々口を開いたかと思えば、たった一言――

『シキ』

と呟いたらしいんだ」

「シキ……ですか……何なのでしょうね……」

ルークが考え込む。しかし、今考えても何も分からないと気付き、風景を眺めることにした。

「チェルミー警部も良くわかってるものだ。警察側から依頼を出すなんて」

「えっ?チェルミー警部が?」

「『君ならば何も言わずとも、調査を始めるだろうからね。こちらから電話させてもらった。』だってね」

ルークはふふっと笑い、「そうですね」と呟いた。


* 
(ルーク視点)

警視庁に近づくにつれ、入り口に見慣れた人影が立っている事に気づいた。

「こんにちはであります、レイトン先生」

この人はチェルミー警部の部下、バートン巡査だ。僕と大して変わらない小柄な背と、ちょこちょこした歩き方が目をひく新人さん。
警部とペアで行動してる事が多く、大きな上司と小柄な部下は"でこぼこコンビ"と名付けるに相応しいかもしれない。

僕と先生は丁寧に挨拶した。

「バートンさん、こんなところで何をしているんですか?」

「レイトン先生を中へ案内するよう言われて来たであります」

あっ、そっか……。
僕達初めてだもんね。


バートンさんに案内されたのは、少し奥に行った、突き当たりの部屋だった。

「この中であります」

バートンさんが言った。
いよいよかぁ……。
僕は緊張と楽しみでいっぱいだった。

「チェルミー警部、連れて来たであります」

ドアを二・三度ノックして、巡査はどうぞと開けた。
先生の後に僕も続く。

2009-09-22 20:25:36


lily

わ…私に様ですか?
そんな偉くないですよ!!

チェルミー警部から直々に依頼ですか…
…改めて、レイトン先生ってすごいですね

更新頑張ってください♪

2009-09-22 20:45:25


閻鬼

いえいえ、お客様は皆神様ですから!(必死w
警部達は書くのが難しいです。改めてゲームをやってますが……。ですね、レイトン先生は誰からも信頼されてるのですよ♪

2009-09-22 20:49:57


閻鬼



壁全体が無機質な灰色に染まり、柄など一切無い。地味な個室に、僕達は案内された。少し肌寒い。夏なのに、どうしてだろう……?

「レイトン、遅かったじゃないか」

チェルミー警部がパイプ椅子から立ち上がって言った。僕達は挨拶もそこそこに、早速本題に入らせてもらった。
部屋に居たのは警部以外誰も居ない。例の少女はどこに居るのだろうか……。

「チェルミー警部、私達は何をすればいいのでしょう? 興味深そうな話なので、早々に来てしまいましたが……」

レイトン先生の言葉を聞くと、チェルミー警部はフム……と一つ頷き、偉そうに腕を組んだ。

「フム……。実は貴様に頼みたい事があってな……」

「何です?」

先生の目が大きくなる。僕も警部の言った『貴様』を気にしながら、聞き耳を立てた。

「君ならば、彼女から何か聞き出せんかね? 私達警察には無口だが、一般人ならば少しぐらい心を開くだろうと思ってな。貴様は数々の難事件を解決した筈だ。これくらい朝飯前だろう」

それとこれとは関係無い気が……と苦笑しながらも、僕達は

「分かりました。やってみましょう」

と承諾した。

「で、肝心の少女はどこなんですか?」

僕が痺れを切らして問うと、扉から、お茶を盆に乗せながたバートン巡査が顔出した。

「彼女には風呂に浸かってもらってる。何しろ薄汚れてたし、変な液体がこびり付いていたしなぁ……」

目の前に出されたお茶を片手に、先生が眉をひそめる。

「液体……?」

「あぁ。スライムみたいなネバネバした物体がだ。いつまでも放っておく事も出来んからな、女警察に風呂場まで通してやった」

僕も先生も液体と言うキーワードを気にしていた。
探偵の心得、『まずは全てを疑え』。

その時、不意にドアがノックされ、今度は女警察と思しき人物が顔を出した。

「警部、女の子がお風呂から出ました」

「ウム。ではこちらに連れて来てもらえないか?」

女警察は返事をすると、そそくさと風呂場まで向かった。
しばらくすると、ドアの向こうで「連れて来ました」という声がした。
いよいよだ……。
僕達はドアを一心に見つめた。

ガチャ――

女警察と共に姿を表したのは、僕と同じ少女だった。

 虚ろな瞳を開き、少女は真っ先に僕と視線を交えた。
輝きを失い、希望を捨てた光宿らぬ瞳。
乳白色のバスローブをぎこちなく着ている。ローブの方が少し大きいようだ。
腰まで垂れた煌びやかな金髪が、蒼白な彼女の肌を際だたせた。
 少女は女警察に誘導され、チェルミー警部の横に置かれたイスに腰掛けた。
 僕と彼女は不思議と目線を反らそうとはしなかった。少女の美しさに圧倒されていたのかもしれない。

 その時、警部がゴホンと咳払いをした。正気を取り戻した僕は、慌てて警部へと顔を向ける。

「さてレイトン、彼女こそ名も知れぬ『天女』だが……何かわかったかね?」

 まだ会ったばかりじゃないか、と思ったが、口には出さなかった。

 自分の紹介をされたにも関わらず、当の彼女は口を閉ざしたまま、相変わらずの無表情であった。

 先生は何とか彼女を喋らせようと、様々な事を尋ねてみたが、少女は硬い表情を一向に崩そうとしなかった。
まるで拒絶するかの如く、他人と目を合わせようとしない。
だが僕の顔に視線を向けると、ほんの少し、微笑んだような気がした。

 10問目の質問が悉(ことごと)く敗れると、先生は深くため息をつき、お手上げだと警部に目配せした。英国紳士の先生でも心を開かないなんて……。僕は何となく居心地が悪くなり、椅子に座りなおした。

「あ、あの……」

 重々しく話しだすと、その場の居た皆が驚いたように僕を見た。

「この子の親とかはどうしたんですか? 行方不明届けとかは……?」

「それが……いろいろと手配してるんだが、何一つ情報がこないのだよ。それに、下手にマスコミ共の目を引きたくはないしな。あいつ等を追っ払うのはいろいろと面倒なのだよ」

「はぁ……」

 僕は複雑な表情をした。少女にもう一度顔を向けると、彼女は僕を観察するのに飽きてしまったのか、小窓の向こうに広がる青空を見つめていた。

 一羽の鳩が、真っ青な空に浮かんでいた。

2009-09-22 20:53:53


閻鬼

一応イメージソングが決まりました。
お暇があればどうぞ聞いていってください♪
http://www.youtube.com/watch?v=Hezt6zeXGU4

2009-09-22 20:58:00


閻鬼

第六章 無情の喜び

「えっ、今何て!?」

 僕は上擦った声でそう叫んだ。先生も同じ様に顔をしかめている。

「何てって……今言った通り、『暫く君達に彼女を預かってほしい』と申しているのだ」

 チェルミー警部が煙草の煙を吐き出しながら面倒臭そうに言った。
どう話が転がればこんな結果になったのか……。
それは僕にもイマイチ分からない。とにかく、突然警部が無茶な話題を持ちかけてきたのに変わりない。

「それは……何故です? 何故私達に?」

 先生も面に出してはいないが、かなり動揺してるようだ。

「彼女のような心を閉ざしてしまった人間には、何らかのセラピーが必要なものだ。これは悪魔でもワタシの推測だが、彼女には人の触れ合いが必要だと思うのだよ。ワタシがこのような事態を頼めるのは君達ぐらいしか居なくてね。それに、君のところには何かと人が訪れやすいだろう? それで事件が解決したなら、一石二鳥じゃないか」

 警部は今考えたような出任せをあれやこれやと続けていき、結局は僕達他人任せって事になったようだ。
 敏腕刑事が聞いて呆れる。つまり面倒な子守は全部僕達に任せるって事だろう?
 国家の警察がこんなんでいいのだろうか……。

 しかしレイトン先生は、警部の出任せを聞いた後、暫くの間黙り込んでしまった。
えっ? まさか、子守をやろうって言うんじゃ――

「……分かりました。引き受けましょう」

「えぇっ? 先生、それ本気ですか!?」

「本気の本当だよ。警部には何かとお世話になってるしね。少しはいいじゃないか」

 少しって……。

「それに家族が増えて何よりだろう?」

 そう言って笑った。レイトン先生はいつもそうだ。何かと危険な依頼でさえ、すぐ引き受けてしまう。その明るい考えは何処から湧いて来るのか……。

「おぉ! 君ならそう言ってくれると信じていたよ! では、何かあったら此方へ連絡するように。ワタシの方でも分かり次第連絡をよこすようにするからな」

 警部が普段見られないような表情を見せながら、先生に握手を求めた。
そりゃそうだもんね。自分は苦労しなくて済むんだから。

 僕は大人達を横目に見ながら、少女に挨拶の意も込めて微笑んで見せた。
すると少女が――微かに笑ったように見えた。



 一方変わって此処は事務所。言わばレイトン先生の自室である。物が乱雑に散らかってる事を除けば、わりと快適なものだ。
 僕達は警察署から帰宅後、真っ先に彼女をこの部屋へ案内した。(今思えばもう少し片付けておくんだったと後悔しているが)
しかし少女の反応はいつも通り。まっ、かえってその方が良かったのかもしれない。
 それにしても、本当に連れ帰って来てしまったが……果たしてそれが良い行いだったのだろうか。
彼女にとっては随分と迷惑な行為だと思うが、まぁ、何も言わない彼女が悪いのだから仕方がない。
そう考える事にした。

 少女はちょこんとソファーに座り、部屋を見回している。
僕も対立したもう一つのソファーに腰掛け、様子を探る事にしていた。

 何て言ったって、部屋には僕達以外誰も居ないのだ。えっ? 先生? 先生はこれから会議があるらしく、僕を残して出て行ってしまった。
 見知らぬ少女と二人きりとは……。もの凄く気まずい雰囲気だ。

「あの……」

 少女がゆっくりと視線を合わせる。猫のように鋭い紅目が日光を受けてきらきらと輝く。
つい彼女に見入ってしまいそうになったが、気を確かにして、僕は再度口を開いた。

「えっと……僕はルーク! ルーク・トライトンって言うんだ。宜しくね。あの……君は何て呼べばいいの……? 名前は? 名前は何て言うんだい?」

 先生達でもなし得なかった名前を、何とか探り当てようとする僕。
僕が出来るだけ明るく振る舞ったが、依然彼女は無表情のまま、僕を見つめている。

 しかし、突然か細い声が響いた。

「……な」

 今にもかき消されてしまいそうな、美しいくも繊細なソプラノ。
僕は唖然と彼女を見た。
今の声は……彼女の?

「えっ? もう一回――」

 さっきよりも幾分聞き取れる声で少女は言った。

「"なまえ"とは……何なのだ?」

2009-09-22 21:04:57


閻鬼

我が耳を疑わずにはいられなかった。名前を知らないのではなく、名前の意味そのものを否定してきたのだ。
 まさかそんな返答が帰ってくるとは思っていなかった僕は、ただ唖然と少女を見つめる事しか出来なかった。
 その時、丁度レイトン先生が戻って来た。何やら嬉しそうなところを見ると、会議で成功したようだ。しかし場の空気を読みとるなり、僕に何事かと尋ねてきた。
訊きたいのはこっちだよ……。

「それが……先生、彼女は名前を知らないそうです」

 僕は少女が"名前"の意味そのものを知らないという事を説明した。しかし先生は慌てた様子も無く、小さくと「そうか」と呟いた。

「では改めて。私はエルシャール・レイトンと言う。君は名前を……覚えていないのかい?」

「……ないわ」

 少女は素っ気なく答えた。すると先生は僕に向き直り、声を潜めて言った。

「ルーク、もしかしたら彼女は……」

 寸前になって、躊躇(ためら)うように一息置いた。

「記憶が確かではないのかもしれない」

「えっ! じゃあ、記憶喪失……って事ですか!?」

「そうとも考えられる」

 何と言う事だ。記憶喪失だって? また厄介な問題を抱えた子が来たものだ。
 記憶喪失と言えど、その種類は多々ある。大半は断片が抜け落ちてしまう場合が多いが、中には言葉自体の意味を忘れてしまっているケースもある。それが一番の難関であった。
――そう、先生から教わった。

「今回の場合は彼女自身でさえ何事か分かってない筈だ。家を訊こうにも、無理な話って事だね。だが何も対策が無い訳じゃない。警部の言った通り、人は何かを触れたり感じる事で、記憶を取り戻す事もある」

「じゃあ僕達の任務は……」

2009-09-22 21:13:36


lily

勢いがすごいというか、更新されるの早いですね!!

やっぱり不思議…

頑張ってください!!

2009-09-22 21:18:56


閻鬼

勢いがあると言うか・・・原作(他サイト)からコピってるだけですからねw
多分この先は更新遅くなると思いますよ;
もう不思議すぎて訳わかんなくなってますがね^^;

2009-09-22 21:26:01


閻鬼

「そう。彼女が家に帰れるよう、手伝いをする事だね」





 それから幾日か、僕は先生の事務所に泊めてもらう事となった。
彼女と出来るだけ一緒に入れるように、1日でも早く仲良くなれるようにね。
 しかし少女は一向に僕達と向き合おうとはしなかった。半開きの瞳には何も映らず、ただ空を見上げているだけ。
彼女が何を思い、何の為に空を見続けているのかは、依然分からなかった。
時折見せる僕への微笑みにも、何の意味が込められているのでさえ、分からないまま……。

 最初は少し間を置いていた。人ならぬ気配を発する彼女に怯えていたのかもしれない。
だが時が経つにつれ、その警戒は和らいでいった。
寧ろ彼女に同情を覚え始めていたのだ。

 先生は言っていた。
彼女は自身が何者なのかも、大事な身内の事でさえ忘れているのではないか、と。
拾われた以前の記憶が全く無いのではないかと予測していた。

 僕は少女に何を感じだのだろう。同情以外に何かが芽生え始めていた。
これだけは確かだ。
僕と少女の壁が、少しずつ消え始めていた……

2009-09-23 00:37:10


にし

ルーク!
もしかして君は…!!

いえ、なんでもないです。
気にしないでください^^;


続きを楽しみにしています♪

2009-09-23 20:58:15


閻鬼

にし先輩

あ、ありがとうございます[d:0162]ルークがこれからどう発展([d:0159])するかはお楽しみ…と言う事で[d:0146]←

2009-09-23 21:51:25


閻鬼

第七章 ライ

 それはある日の昼下がり。彼女が初めて好意を抱いた日だった。

「ねぇ、君」

 僕はいつものように少女を呼ぶ。名前が分からない以上、身勝手に呼ぶ訳にもいかない。

 少女がゆっくりと此方に振り返った。紅き瞳に淡い好奇心が過(よ)ぎる。
彼女は「何?」と問い掛けるように瞬(まばた)きした。

 午後のお茶を楽しんでいた先生も訝しげに視線を向けた。

「君の名前……僕が考えてもいいかな?」

 彼女をいつまでも"君"と呼んでいては一向に進展しないと感づいた僕は、少女に仮の名を付けてやろうと提案した。
勿論本来の名前だってあるだろう。
しかし彼女はその本来の名だって忘れているのだ。
これは彼女の為であり、僕達の為だってある。

 すると少女は驚いたように目を丸くさせた。

「……何故? 貴方はいつも何故そうも優しく接するの?」

「えっと、それは……」

 僕は彼女の問い掛けに口を詰まらせた。いざ言われると上手く説明出来なくなってしまったのだ。
こちら側の作戦を詳しく教える訳にもいかない。

「うーん……どう言えばいいんだろう……。えっと――」

 僕は散々頭を捻らせた末、たった一言

「君ともっと仲良くなりたいんだよ」

と答えた。

 少女の目に嬉しさと驚きが入り混じった奇妙な色に変わった。
この時の僕は真っ赤になっていただろう。
普段口に出さない大仰な台詞を言ってしまった自分に、得も言われぬ恥ずかしさを感じたのだ。

「ルーク、彼女の名前は何にするんだい?」

 場の静けさを破るように先生が言い出した。
見たところ先生もこの意見に賛同したようだ。

 その瞬間、窓から柔らかな風が入り、僕達の肌をサッと撫でた。彼女の髪が午後の光を受け黄金に輝く。

「……ライ」

 僕は優しく呟いた。

「ライ?」

「はい、彼女の髪の色――黄昏《トワイライト》にあやかって」

 僕は少女の隣に腰を下ろすと、最高の笑顔を向けた。

「ライ、これからも宜しくね」

「……ありがとう」

 初めてライが心からの笑みを見せた瞬間だった。

2009-09-28 18:52:38


蘭花

凄い長い文章+上手な文章……。
完璧ですね……さすがキョウ様のお友だち様です。
私も元々ここにいた方に紹介をいただき来ております。
キョウ様ならご存知かと思われますよ。

蘭花です。以後お見知りおきを(まね)
頑張ってください!

2009-09-29 19:31:48


閻鬼

蘭花 様

初めまして蘭花様。えぇ!? 完璧!!?
それは(絶対)ありませんよ。うん、無い無いww
キョウとは関係ないかもしれませんよ……?
あいつただのヲタだし…(溜息

そうなんですか?では明後日奴にきいてみます……。

ありがとうございます!今後ともよろしくお願いします。

2009-10-03 20:05:22


閻鬼

第七章 月下の逃走

「……腹、減ったなぁ」

 退屈そうに呟く青年が一人。本来真っ白なはずの白衣には赤い血痕が飛び散り、錦鯉(にしきごい)のようになってしまっている。それでも彼は不満どころか大いに気に入っていた。
 彼の声が虚しく響き渡る。誰も居ない監獄なんて、本来俺の居るべき場所ではない。
早くここから脱獄して、そして――

「……何すんだっけ?」

 壁のしみにそう尋ねたが、勿論返答など返ってきやしない。だが、

「ゼロの暴走を止めるんでしょ。もう、しっかりしてよ」

 と半ば呆れた感じの声が返された。男がキョトンと鉄格子の外側を見やると、青年と同じ年頃の女が銀の盆を持ちながら、溜息をつくところであった。

「グウィネス……お久しぶりだね」

 青年はにっこりとグウィネスに微笑んで見せた。だが力一杯殴られた痕跡がズキッと痛み、頬が引きつった。そして小動物のように鼻をひくつかせ、格子ににじり寄った。

「飯!? おぉ、サンキュ!」

 彼が勢いよく手を伸ばして盆を掴もうとしたが、寸前のところで取り上げられてしまった。

「まったく貴方って人は……。人があんだけ心配したにも関わらず、女より飯を取るのね!」

 グウィネスは眉間にしわを寄せながら青年のやせ細った手に平手打ちをかました。「イッ」と小さな悲鳴を漏らし、後ろにのけ反る青年。青白い肌にくっきりと跡が残った。

「仕方ねぇだろ? こっちは少なくとも三日間何も飲まず食わずないんだから。そりゃ綺麗な女が居たって命を優先しなくちゃ」

「……私は三日間泣きまくったのよ」

 青年はその時初めて彼女の泣き腫らした顔を見つめた。ずっと自分のことを気遣ってくれていたのだろう。美しい蒼の瞳が未だに潤んでいた。

「悪かった。お前がそんなに心配してくれてるとは思ってなくて」

「……シキ、私……貴方を信じてるから」

 グウィネスはそれだけ言うと、今まさに流れようとしていた涙を拭った。そしてパッとひまわりのような笑顔を見せてくれた。否、今のシキにはそう見えた。

「サッ、しっかり食べて。話はそれからよ。――あっ、私の晩御飯まで食べないでね!?」

 シキは貪るように味気のない飯を食べだした。冷たい飯はあまり好かないが、この際贅沢など抜かしてられない。だが……何故だろうか。今日の麦パンはやけに温かく、塩辛かった。

2009-10-05 21:54:54


閻鬼



「で、どうすんのよ」

 グウィネスが自分の晩飯〈どうしても譲らなかったメインの塩肉〉をちまちまと食べながら訊いた。シキが炭水化物を頬張りながら目を丸くさせた。

「え、何が?」

「『何が?』じゃないでしょ。これからどうするのって訊いてるのよ。ゼロの手掛かりも無しに……」

「ちょっと待った。まず脱出を試みねぇか? ここは"アイツ"の本拠地。生半可じゃ出るどころかあの世送りにされちまうぜ」

 すると彼女は目にかかっていた前髪をサッと上げ、慣れた手つきで縛り直し始めた。

「私を無能だと思って? ちゃんと策ぐらい練ってるわ。……少々危険は伴うけど」

 グウィネスは懐から用心深く取り出した物を青年の前に差し出し、不安気に言った。鈍く光るそれを目にすると、青年はみるみるうちに血の気が引き、絶句した。
 
「な……何を考えてるんだ! 君まで一緒に――」

「ねぇシキ、言ったでしょう?」

 動揺する青年を宥めるように少女は目を見開いた
。凶器を慎重に胸へと埋める。彼女は微かに震えていた。

「私は貴方を信じるわ。シキと一緒になら何処へだって行く。だって私は――」

 最後の台詞を言いきる前に、制止を求める合図が見られたので、彼女は仕方なく口を閉ざした。

「分かってるさ。お前は俺の一番頼れる助手だもんな。上司を心配するのも当然だ」

 満面の笑みを見せるシキ。グウィネスは深い溜息をついて諦め、いつもの相槌を打っておいた。

『シキ、貴方って人は……』

 さっきの溜息は安堵の溜息だったのかもしれない。
長い間牢獄に監禁せれていても、シキはシキだった。
それが妙に嬉しく感じさせたのだ。


その夜、白々しい夜道を二つの人影が横断して行った。

2009-10-06 18:50:53


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